2013 Fiscal Year Research-status Report
無機ナノシートの格子エネルギーを利用した有機分子の高圧物性の常圧での実現
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24655131
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
川俣 純 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40214689)
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Keywords | 無機ナノシート / 無機層状化合物 / 粘土鉱物 / 高圧物性 / 蛍光 |
Research Abstract |
本研究は、無機層状化合物の層間という環境が層間に取り込まれた有機化合物に及ぼす①圧力場を定量的に理解し、②圧力を自在に制御する方法論を確立すること、および、③無機層状化合物の層間に有機化合物を挟み込むことで、高圧で顕著に生じる物性を常圧の環境下でも発現させることを目的としている。 平成24年度までの研究で、無機層状化合物の層間環境が生み出す圧力場の生成メカニズムを定量的に理解することができ、圧力場を0.5~2GPaの間で自在に制御できるようになった。平成25年度は、無機層状化合物の層間環境を外部刺激により変化させ、圧力場の変化に起因する物性変化を外部刺激により誘起する手法を探索した。モデル化合物としては、これまでの研究で層間距離の変化に応じて吸収や蛍光の色が変化するビフェニルの誘導体を選んだ。 無機層状化合物の一種である粘土鉱物の層間隔は、水などの極性の液体の加除により伸縮する。そこでこの粘土鉱物の性質を利用し、粘土鉱物とビフェニル誘導体とからなるハイブリッドに、ジメチルスルホキシドやエチレングリコールのような揮発性の低い有機液体を加えることで層間距離を拡げた。その結果、ビフェニル誘導体が示す蛍光色が緑色からオレンジ色へと変化した。この色の変化は、層間環境場を高圧の状態から低圧の状態に変化させたときの色の変化と対応しており、層間距離の拡大により取り込まれた分子に作用する圧力場が弱くなることで蛍光色が変化することが裏付けられた。また、この変化は可逆的で、揮発性・極性が共に高いエタノールのような有機液体でジメチルスルホキシドやエチレングリコールを洗い流すと、層間距離が元に戻り高圧の環境場が再現されることも明らかにした。 その他、指で押す程度の圧力でも色調が変化するハイブリッド材料の創出にも成功しており、現在そのメカニズムの解明を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画はほぼ達成し、計画には含まれていなかった「外部刺激による圧力環境場の制御」に関する研究も進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
外部刺激による圧力環境場の制御に関する研究の中でも、指で押す程度の圧力で色調が変化するハイブリッド材料については産業界からの関心が高い。しかしながら、そのメカニズムは未解明であるため、産業上の要請がある物質を自在に作製できるには至っていない。そこで、今後はこの色調変化のメカニズム解明に向けた研究を推進していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度1月に発注した機器の納品が年度内に完了しなかったため。 発注した機器は4月に納品されており、その支払いに使用する。
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