2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24655133
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
中江 隆博 愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (20505995)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ナノグラフェン / グラフェンナノリボン / 有機半導体 / 多環式芳香族炭化水素 |
Research Abstract |
グラファイトの部分構造であるグラフェンナノリボンは,理論的・実験的側面からシリコンを凌駕する電気特性を示すことが注目されている次世代の半導体材料である.従来は量産に不向きかつ多大な労力が必要なトップダウン手法による作成・評価が行われてきたが,均質な材料を量産し実用化を目指すには化学合成による大量合成手法の開拓が切望されている. グラフェンナノリボンの特性は細線幅と構成する六角形格子の方位によっても変化する(カーボンナノチューブと同様にカイラリティを呼称).グラフェンナノリボンの成長軸と炭素の六角形格子の角度を変化させるための分子設計の指針として,本研究課題では2種のモノマー単位を組み合わせることを提案する.2種のモノマーを組み合わせ,ナノグラフェン材料への変換プロセスをモデル分子を用いて検討を行い,キラルグラフェンナノリボンのボトムアップ合成の基礎技術の確立を目指す. 平成24年度は、有機低分子原料として,ハロゲン化縮環芳香族分子原料のモジュール合成、クロスカップリング反応による,2種の縮環分子ユニットを連結したA-B-A型前駆体分子を合成した.化学酸化剤を用いた共役拡張反応の検討において,脱水素縮環化合物の生成を質量分析によって検出している.生成するナノグラフェンモチーフ分子の構造決定と反応効率の改善に取り組んでいる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キラルグラフェンナノリボンの合成原理を実証するための,部分モチーフであるナノグラフェンプレート前駆体分子の合成を行った.パーツ分子であるジヨウ素化縮環分子は,これまでの研究で開発した塩化金触媒を用いる高効率環化反応によって定量的に得ることができる. (1)縮環芳香族分子パーツの合成 ジヨウ素化縮環分子群にクロスカップリング反応を用いて二成分からなる前駆体オリゴマー分子A-B-A等を合成する.クロスカップリング反応条件で,重合を防ぎ選択的に3ユニットからなる前駆体分子を合成するため,官能基の1つに高溶解性を付与する置換基を導入した. (2)脱水素環化によるナノグラフェンプレートの合成 合成した3ユニットからなる前駆体分子に対して,化学酸化試剤を用いる環化芳香族化反応を検討した.化学酸化によって発生したラジカルカチオン中間体を経由する縮環-環拡張を示唆する化学種を質量分析により観測している. 今後のより4連結・5連結前駆体への展開を計画するにあたり,溶液系での化学酸化に伴う化学酸化試剤の分離を避けるべく,外部エネルギーの印加手法として,金属基板上での熱処理や電子エネルギーの注入に関する予備実験に着手した.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)A-B-A型ナノグラフェン分子の化学合成・構造決定 平成24年度に生成を確認したナノグラフェン分子を単離を行う.単離を行うことで,X線構造解析,NMRにより構造決定を行う.目的とする構造のナノグラフェン分子を単離し,ラマン分光,反射吸収スペクトルと量子化学計算によるスペクトル予測を対応付けることで,有機合成化学的手法での単離精製が困難になることが見込まれるオリゴマーからのナノグラフェン構造体の構造決定手法を検証する.また,A-B'-A,A'-B-A'等の組み合わせによる種々のキラルグラフェンモチーフへ適用可能か検証を行う. (2)熱・電子線エネルギーによる分子変換の検討 化学酸化試剤を用いる共役拡張プロセスでは,酸化剤由来の試剤を除く精製操作を避けることができない.この課題を解決すべく,金属基板に堆積させた前駆体分子に対する,熱的・電子エネルギーの印加による分子変換を検討する.金・銀・プラチナ等の金属表面を反応場兼,反射分光測定に適した基板として用いることを計画している. (3)5,6,7員環を含む多環式芳香族炭化水素の創出 平成24年の研究の過程で,芳香族性5,6,7員環を持つ炭化水素化合物の合成に成功した.近年,ジグザグエッジ型グラフェンナノリボンの電子豊富な端構造で骨格の5員環・7員環への組み換えが高分解能走査型顕微鏡で観察された.5員環7員環を含む平面π共役分子,曲率を有するπ共役分子の機能素子としての性質は炭素に内在する機能を引き出す手法として着目し,新奇ビルディングブロックとして分子素子の合成と機能開発に取り組む.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品として.合成化学実験に必要な試薬類,消耗品としてのガラス器具類を主たる使途に計画している. 備品として,熱・電子エネルギーを用いた分子変換に用いるパターン化金属修飾基板作成に用いるグローブボックス装置等を整備する計画である.その他の必要設備は,所属研究室・部局に現有するもので対応可能であり,一部は機器使用料を支出する. 研究成果の学会発表を国外1件,国内3件(報告時申込み)で行うための旅費を支出する.
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Research Products
(25 results)
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[Journal Article] Synthesis, structure and properties of ethyl naphth[2,3-f]isoindole-1-carboxylate2013
Author(s)
Aya Seike, Kaoru Yamagami, Yoshimasa Kakitani, Miki Kuwajima, Hiroki Uoyama, Shin-ichi Nagaoka, Takahiro Nakae, Shigeki Mori, Tetsuo Okujima, Hidemitsu Uno
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Journal Title
RSC Advances
Volume: 3
Pages: 3006-3016
DOI
Peer Reviewed
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