2012 Fiscal Year Research-status Report
乾いた空気から光化学反応を用いて水を絞り出し大地を潤す
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24655137
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
奥津 哲夫 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20261860)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀内 宏明 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00334136)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光化学 |
Research Abstract |
水蒸気が未飽和な空気に真空紫外光を照射すると、過酸化水素が生成し、これが核となり水滴が発生する現象を応用し、未飽和な空気から水を絞り出す研究を進めた。検討項目と結果を下記に示す。 1. 水の取り込みを実際に行うことができるか確認するための実験を構築。結果:70Lの発泡スチロール製の密閉容器を製作し、中に光源、水蒸気発生用の水、電子天秤、天秤状に水滴捕集用の水の入った皿、温湿度計を入れ、光の有無により天秤上の水の増減を観察した。その結果、真空紫外光を照射した場合にのみ天秤上の水皿の重量が増加した。作製した装置で未飽和な空気から水を移動させることに成功した。 2. 水滴の発生機構の考察。水滴の観察。水滴サイズの測定。結果:水滴を捕集した水に過酸化水素が含まれるか分析した。その結果、過酸化水素が観測された。次に、光学顕微鏡を箱の中に構築し、発生した水滴の大きさを試みた。しかし、水滴の運動の速度が大きく、ピントの合う範囲でとらえることができなかった。発生した水滴は予想よりも小さく、霧滴の観測に用いる色素着色法などでは観測にかからないことが明らかになった。水滴の大きさを観測することは撤退とした。 3. 水滴を高密度に発生させる光照射装置の検討 低圧水銀灯(110Wおよび7W)、D2ランプを比較した。その結果、110W 水銀灯が最も水滴発生量が大きかった。 4. 水滴を効率よく取り込む媒体の選択。水滴の取り込み効率を高める検討を行った。水滴の捕集にはバルクの水面を用いているが、この水面からは絶えず水分子が蒸発している。飽和食塩水を用い蒸発を抑制した。その結果、純水の約2倍の取り込み効率が得られた。この実験をフィールドで行うことを想定し、砂、落ち葉等の地表の物質表面への水滴の付着を測定した。その結果、純水に比べ、1/3~1/4程度の取り込みが観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載した研究計画を遂行し、予定の実験に着手した。その結果、天秤を用いて水滴がバルクの水面に取り込まれる現象を再現性良く観察することに成功した。本萌芽研究における最初の課題は、原理を実験的に示す方法論の確立であったので、進展は「順調」とする。また、水滴を捕集するために環境に存在する、砂、落ち葉等の物質を用い評価を進めることができたので「順調」と評価する。しかしながら、予定の課題に着手できていない項目がある。 この実験は屋外で光を照射し、霧を発生させ、地面に水を取り込ませることを目指している。現在は小さな箱の中の空間で行っている実験を、より大きな空間で行い、空気の流れやランプの位置などのパラメーターを理想的な条件で設置し、屋外に持ち出して評価する方法を実現する必要がある。この目標に対しする実際の実験に着手できていない。これらの成果を勘案し、当初の計画以上の成果が得られたとはいえない。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、原理的に実証した現象を、自然の環境で実現させることを検討することである。そのために、70Lの箱を用いた実験から、より大きな空間を用いて実験すること、そして、実際のフィールドでの実験に移行する。そのための検討項目を示す。 1. 箱での実験とより大きな空間の中では、空気の流れどのように異なるのか検討する。発生した水滴がどのように移動するのか可視化する。 2. 発生した水滴を捕集するために、好ましい物質の検討。および、環境中に存在する物質が持つ能力の評価を行う。 3. この研究の抽象的な意味づけを、文章や口頭で報告する機会を持つ。特に、熱力学的状態を、より非平衡状態の側に移行させるという方法論の認知を得る行動を起こす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は予算の繰り越しをした。その理由を以下に述べる。実験が概ね順調に進んだため、新たな備品を購入する必要がなく、予定していたよりも費用がかからなかった。本研究では小さな箱で行った実験を最終的にフィールドで行うまでのつなぎの実験として、数m3の空間を準備する予定であり予算を計上していた。しかし、この空間がドラフトを改造することにより使用できることがわかった。ドラフトは建物の設備であるため、改造費用は校費から支出したため科研費は使わなかった。これらの事情により、研究費を消耗品代として次年度に繰り越すことにした。 水滴を効率よく取り込む媒体の選択の検討を継続する。今年度は、1.土壌の成分ごとに水の取り込み効果を明らかにし、構成比率と取り込み効率を調べる。2.土壌保湿剤を用い、効率の増加を検討する。次に、土壌を潤すだけでなく、水蒸気の濃縮について基礎的検討を進める。3.具体的には、この成果は外気の空気から室内に水蒸気を取り込むことを検討する。水蒸気ポンプとして用いることが可能な媒質を検討する。
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[Presentation] Photochemically-induced Protein Crystallization2012
Author(s)
T. Kuroiwa, K. Kobayashi, T.Taguchi, Y. Takase, S. Haruta, T. Yamashita, H. Imai, Y. Ishikawa, H. Horiuchi, H. Hiratsuka
Organizer
Japan-Netherlands Symposium on Crystal Growth -Theory and In-situ Measurements-: JaNe2012
Place of Presentation
sendai
Year and Date
20120722-20120725
Invited
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