2013 Fiscal Year Research-status Report
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24655158
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
一二三 恵美 大分大学, 全学研究推進機構, 教授 (90254606)
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Keywords | BBB / ナノ抗体 / がん細胞傷害性 |
Research Abstract |
1,ヒト型ナノ抗体ライブラリーの発現・精製方法の改良:野生型軽鎖ナノ抗体は、C末端にCysを有しているために、精製過程で二量体化が起こる。BBB透過性という観点では単量体の方が有利と考えられるが、がん細胞傷害性試験においては単量体よりも二量体、二量体の中にも比較的効果の高い画分と、それ程強くない画分があることが分かってきた。単量体は、CysをAlaなどの他のアミノ酸残基に変えることで取得可能なため、がん細胞傷害性の高いFormとして取得するための精製方法を検討した。精製過程で酸化促進のための微量金属の添加とインキュベーション時間を設けることで、目的とするFormの割合を上げることが出来、同時に精製の再現性も向上した。また、大腸菌BL21(DE3)pLysSを用いる発現において、発現誘導を行う前の段階から低温培養することで、最終的なナノ抗体タンパク収量が約1.5倍に向上することが分かった。 2,ヒト型ナノ抗体ライブラリーの評価:これまでの検討より、現在取り扱っているヒト型ナノ抗体ががん細胞の増殖抑制能を示す場合には、特定のがん細胞に対して効果を示すというよりは、複数のがん細胞に対して効果を示すことが分かっている。そこで、数種類の上皮性がん細胞を用いるがん細胞傷害性試験を実施した。また、昨年度までのライブラリーは、生化学的な機能を有す可能性の高い一群から作ったライブラリーであった。この一群はBBB透過性という観点からは適していない可能性もあるので、ライブラリーを拡張して試験を進行中である。 3,BBB透過性試験の準備:BBB透過性試験はキットを用いる計画であるが、血管側から脳側へ移行したナノ抗体の検出系が別途必要となる。酵素免疫測定法による分析系の構築を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の当初計画に従って述べる。 1)H24年度までにクローニングしたナノ抗体遺伝子の大量培養・高純度精製:ナノ抗体の精製を進める中で、ナノ抗体が高純度に精製された複数の分画に分かれることが分かってきた。これは、ナノ抗体の構造多様性に起因すると推察されたことから、高いがん細胞傷害性を示すFormに均一化させる検討を行い、この問題はほぼクリア出来た。この検討に時間を費やしたために、以下の項目の進捗がやや遅れているが、Formを揃えて再現性良く精製することが可能になったことから、全体的には効率は上がっている。 2)BBB透過性試験:前項の検討を優先し、精製ナノ抗体の評価(生物学的活性の高い分画が得られているか否か)をがん細胞傷害性試験により実施したために、本試験の着手が遅れている。透過性試験の準備として、BBBキットの血管内皮を透過したナノ抗体の酵素免疫測定法による検出を試みている。必要とする測定感度の系がほぼ出来上がった段階である。 3)バイオアッセイ:1)項での精製ナノ抗体分画の評価と新しいナノ抗体クローンに対するスクリーニングを兼ねてWST assayによるがん細胞傷害性試験を行ってきた。当初に計画していた一群のナノ抗体から、さらに範囲を広げた検討を進めることが出来ている。 以上のことから、BBBキットを使った透過性試験がやや遅れているものの、精製ロットのバラツキが殆どない形で精製出来る様になったために、複数のロットを精製・評価する必要が無く(スクリーニングとしては2ロットで良いと考えている)、効率は上がった。従って、全体としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の計画 1)ナノ抗体の発現・精製:ナノ抗体は遺伝子群として大きく3つに分けることが出来る。がん細胞に対する傷害性を示すナノ抗体は、その中の一群に集中していると推定しているが、BBB透過性には必ずしも有利とは限らない。当初はがん細胞傷害性を示すクローンに対するインシュリンレセプターの付加を計画していたが、ナノ抗体の精製効率が高くなったことから、他の2群に分類されるナノ抗体遺伝子についても、代表的な配列を持つものを発現・精製する。 2)がん細胞傷害性試験:BBBキットが高価で多用出来ないことと、ナノ抗体にはがん細胞に対する増殖抑制などの機能を持ってBBBを透過することが必要となるため、BBB透過性試験に供するクローンを選択するためのスクリーニングにはがん細胞傷害性試験を用いる。効果を認めたクローンについては、蛍光ラベルによる細胞への局在の解析や、フローサイトメーターによる作用機序の解析を進める。 3)ナノ抗体変異体の作製:がん細胞傷害性を示したクローンについては、BBB透過性試験用としてC末端のCysをAlaに変えたMonomer変異体を作製する。これは、BBB透過にはDimerよりもMonomerの方が有利な可能性があるからで、選考するクローンのBBB透過性試験で野生型とMonomer変異体に差が認められない場合には、本変異体の作製は中止する。 3)BBB透過性試験:(株)ファーマコセルのBBB透過性試験キットを用いる。血管内皮細胞を透過したナノ抗体の定量は、系を確立中の酵素免疫測定法を利用する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はBBB透過性試験用キットの購入を見送った。本研究では、このキットが消耗品として最も高価であるため、今年度は節約して次年度に予算を残した。また、当初は国内旅費の一部を捻出する計画であったが、参加した学会開催場所の関係で予定金額と上手く一致しなかったので、別の予算で手当して次年度に繰り越すことにした。 物品費はBBB透過性試験用キットの購入に宛て、旅費は学会参加費として使用する計画である。
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Research Products
(8 results)