2012 Fiscal Year Research-status Report
G-C塩基対よりA-T塩基対を安定化させることによる新規DNAナノスイッチの開発
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24655161
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
杉本 直己 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (60206430)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
建石 寿枝 甲南大学, 先端生命工学研究所, 助教 (20593495)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 核酸構造 / 熱力学的安定性 / 相互作用パラメータ / 溶液環境 / 分子クラウディング / イオン液体 |
Research Abstract |
本年度は、核酸ナノテクノロジーの基盤技術である核酸構造スイッチを構築するために、核酸構造に及ぼす分子環境の影響について定量的な知見(核酸相互作用パラメータ)を収集する研究を行った。 まず、DNA及びRNA二重鎖のワトソン・クリック塩基対やミスマッチなどの非塩基対部位に及ぼす分子環境の効果を解析した。その結果、細胞内を模倣した分子クラウディング環境における塩基対部位の安定性は、塩基対部位の水和構造によって決定されていることを見出した(Biophysical Journal, 102, 2808(2012)、J. Phys. Chem. B, 116, 7406 (2012))。さらに、コンピュータの論理素子などへの活用が期待されているDNA四重鎖構造に対する分子環境の効果についても解析した。その結果、分子クラウディング環境下では数珠つなぎ状の特殊な四重鎖構造が形成され、脂質膜内の局所環境下では、四重鎖構造が安定化されることを見出した (J. Am. Chem. Soc., 134, 20060 (2012), Mol Biosyst, 8, 2766 (2012) , Chem. Commun., 48, 4815 (2012))。 一方で、分子環境下でのDNAの相互作用パラメータを基に、核酸構造や機能の制御を行う研究も遂行した。具体的には、分子クラウディング環境によって、機能性RNAであるアデニンリボスイッチとリガンドの親和性を向上させた (Chem. Commun., 48, 9669 (2012))。さらに、分子スイッチの開発を目指して、環境的、工業的観点から注目されているイオン液体を用いて、A-T及びG-C塩基対の安定性を塩基対選択的に制御することにも成功した (Angew. Chem. Int. Ed., 51, 1416 (2012)、 朝日新聞、2012年掲載)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、分子環境が核酸構造に及ぼす影響を物理化学的観点から定量的に解析する。さらに、得られた核酸構造の相互作用パラメータを基に核酸の構造スイッチを活用した核酸マテリアルを創製することを目的としている。本年度は、まず、種々の分子環境下における核酸の相互作用パラメータを蓄積させることを中心に研究を遂行した。 その結果、核酸の構造やその機能は、従来、重要視されていた核酸の構造に由来する相互作用(水素結合、スタッキング相互作用、構造エントロピー)以上に、分子環境に由来する相互作用(クーロン相互作用、溶媒和)が重要であることを見出した(J. Am. Chem. Soc., 134, 20060 (2012)、Biophysical Journal, 102, 2808-2817(2012)など)。 さらに、本年度は、溶液環境によって核酸構造や機能を制御する研究にも着手した。具体的には、蓄積された核酸と分子環境の相互作用パラメータを基にして、カチオンの種類を選定し、核酸塩基の相互作用を巧みに利用することで、リン酸二水素型コリンからなる水和イオン液体を用いて、核酸塩基対特異的に安定性を変化させた。その結果、DNA二重鎖のA-T塩基対をG-C塩基対より安定化させることに成功した (Angew. Chem. Int. Ed., 51, 1416 (2012))。核酸の構造形成は塩基対の安定性に基づいているため、これらを自在に制御できれば、核酸構造スイッチを容易に構築できる。また、イオン液体は環境的、工業的観点からナノバイオテクノロジーへの応用が期待されている液体であるため、イオン液体を用いた核酸構造スイッチを開発できれば、核酸マテリアル開発分野における応用展開は多岐にわたると期待される。二年間で遂行する本研究課題において、現在までのところ当初の計画通り順調に成果を上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、引き続き分子環境が核酸構造に及ぼす影響を定量的に解析するとともに、核酸の構造スイッチを活用したDNA材料の構築を試みる。 まず、本年度の研究で核酸塩基対の安定性を顕著に変化させたリン酸二水素型コリン水和イオン液体に着目し、水和イオン液体が、核酸塩基対の安定性に及ぼす機構をより詳細に分子レベルで解析する。また、水和イオン液体(またはコリンイオン)と核酸塩基の微細な結合様式を、in silicoでMolecular dynamics simulationsを用いても解析を行う。さらに、対象とする核酸構造を機能性核酸に多く見られるフーグスティーン塩基対にまで拡張して、研究を遂行する。種々の分子環境下におけるフーグスティーン塩基対及びワトソン・クリック塩基対の熱力学的パラメータを算出し、分子環境の影響をエネルギー的(ΔHo、ΔSo、ΔGo37)に議論する。安定性の評価は核酸の定量的解析において標準溶液とされるNaCl溶液中での安定性と比較することで行う。 同時に、初年度に得られた知見を活用して、核酸構造スイッチを構築し、この核酸構造をセンサーとして活用することを試みる。具体的には、A-T塩基対が劇的に安定化されることを活用して一塩基多型を検出するDNAセンサーの開発を行う。さらに、DNAの二重鎖から三重鎖構造への構造スイッチを活用したHIV遺伝子由来の配列等を検出するセンシングシステムの構築も試みる。核酸と分子環境の相互作用を活用した核酸構造スイッチは、溶媒変化によって構造スイッチを誘起するため、これまでに人工的に作られたスイッチ機能を持つ修飾核酸のような煩雑な合成等が不要である。そのため、様々な核酸に簡便にスイッチング機能を付与できる新規の手法であると期待できる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
核酸の精製・分離や、DNAマテリアルの構造解析に用いるため電気泳動装置システム(150千円)を購入する。円滑に研究を遂行するため、研究対象となる核酸は受託合成し、イオン液体は購入する。そのため、これらの必要となる費用として、消耗品費として715千円を計上している。 また、本研究の成果を対外的に公表するため、学会等の旅費など100千円を計上している。その他、外国語論文の校閲費や印刷費として85千円を計上している。
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[Presentation] 機能性核酸の謎に迫る2012
Author(s)
杉本直己
Organizer
第52回 生物物理若手の会・夏の学校
Place of Presentation
支笏湖ユースホステル (北海道)
Year and Date
20120831-20120902
Invited
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