2012 Fiscal Year Research-status Report
ブルー相の温度幅を拡大するC3対称キラルドーピング法の確立
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24655166
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岸川 圭希 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40241939)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 液晶 / ブルー相 / 選択反射 / ディスプレイ / フォトニック液晶 |
Research Abstract |
高速応答液晶表示やレーザー発振の材料として期待されている液晶相の一つブルー相(BP)は、等方液体(Iso)とキラルネマチック相(N*)の間に1K以下の温度幅で出現する不安定な相であり、温度幅拡大の方法論を確立することが本研究の目的である。具体的には、BPの温度幅拡大に有効な対称性の高いドーパント化合物の分子構造を設計合成する。 平成24年度では、1)種々のC3対称キラルドーパントおよびpseudoC3対称キラルドーパントを合成し、市販のネマチック液晶化合物(5CB、MBBA、EBBA等)に添加したが、安定なBPを発現する化合物は見出されなかった。2)研究の対象をC2対称キラルドーパントにも広げたところ、酒石酸誘導体において極めて有望なC2対称キラルドーパントが見出され、5CBに添加したところ、螺旋誘起力が150μm-1と非常に大きい値を示した。このキラルドーパントの添加量4mol%で、安定なBPが、4K観測され、液晶をEBBAにしたところ、添加量7mol%で、降温過程11KのBPが観測された。この温度は、本研究の数値目標である60K以上よりは少ないが、単一の液晶化合物と単一のキラルドーパントの組み合わせとしては、最も広い温度幅である。3)BPの格子定数を測定する為に、250~1000nmを測定可能な反射光測定システムをラムダビジョン社と共同開発し、BPの選択反射の波長測定が可能となった。BP-Iの同定や、キラリティや温度による格子常数のシフトを観測できた。4)末端アルキル鎖長を変えてもBPに変化を与えないが、メチル基導入などにより嵩高くなると、BPは発現しなくなることがわかった。5)本研究では、単一の液晶化合物と非常にシンプルなドーパントから安定なBPが発現するので、得られた情報は、BP発現のメカニズムを考える上でも非常に有用であり、現在、欧文誌への投稿を準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで報告されているブルー相は、多数の化合物からなる系や、複雑な構造を有する化合物が多かった。ところが、今回のブルー相は、市販の液晶化合物EBBAという最も一般的なものに、C2対称性を有するシンプルなドーパント化合物を7モル%添加することで、温度幅11Kもの安定なBPが発現する。これまでに類を見ないシンプルなBPである。単純な系は、理論的にメカニズムを考えやすいとともに、その応用や発展がしやすいという大きなメリットがある。 また、ラムダビジョン社と共同で、250~1000nmの広範囲の反射光を顕微測定できる装置を210万円で開発することができた。従来のメーカーの装置では、1000万円以上はかかってしまうと思われる。 現在、論文投稿に十分なデータがあり、欧文誌への投稿準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)BPを示す分子の立体配座やパッキング様式の調査を行う。温度域の広いBPを示す混合物について、分子モデリングやMOPAC・ガウシアン計算による最安定構造を調査するとともに、液晶状態での2次元X線回折により、BPやN*の分子の立体配座や配向・充填状態を考察し、安定なBPを示すキラルドーパント分子の構造と液晶全体の集合状態を推測する。BPの下にあるN*についても、螺旋ピッチの温度依存性を測定し、BPの安定性との相関関係を調べる。BPを安定化する分子構造について、複数の仮説を立てる。 2)BPの温度幅拡大のメカニズムとそれを裏付ける化合物群の設計合成を行う。ここまでで得られた結果や、BPを安定化させる分子構造の仮説に基づき、BPの温度幅拡大のメカニズムを考案し、それを裏付ける化合物群を設計合成し、その正当性を示す。 3)研究のまとめを行う。BPの安定化について、液晶分子の分子構造、キラルドーパント分子の分子構造、分子間相互作用、混合の効果、分子配向などがどのように関わっているかをグラフやモデルにより視覚化し、キラルドーパントによるBPの温度幅拡大のメカニズムを確定するとともに、2年間の研究結果を報告書や投稿論文としてまとめる。さらに、各学会や会議により、その成果を公表し、本研究に対する他の専門家の意見や考 え方を学び、本方法の理論の問題点や不完全な点を見出し、さらに、一般性のある方法論へと高めることを続ける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度に分光装置を購入したので、25年度は50万円以上の装置の購入は無く、消耗品の購入に研究費を充てる。具体的には、25年度の研究費(直接経費:60万円)は、ドーパントの置換基効果を確認するための有機合成試薬・溶媒や化合物精製のシリカゲルへの利用がメインとなる。また、測定用のくさびセルや液晶セルの費用も必要である。また、昨年度に引き続き、NMR、MSなどの分析料金の支払も行う。
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Research Products
(21 results)