2012 Fiscal Year Research-status Report
鉄イオンをエネルギー媒体とした非光合成型太陽光炭酸ガス固定
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24655167
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 龍平 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10447419)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 二酸化炭素固定 |
Research Abstract |
太陽光の届かない深海底において, 地球内部から湧き出る還元物質が生物学的CO2固定のエネルギー源となっており, 深海バイオマス生産の約50 %をFe2+が担っていると考えられている。Mariprofundus ferrooxydans (M. ferrooxydans) はそのような環境から単離された鉄酸化細菌であり, Fe2+を電子源としてCO2固定を行う。ここで, 電子源として用いられる鉄イオンの標準酸化還元電位は+0.77 Vである。すなわち, CO2固定に必要な還元力を生産するために, M. ferrooxydansは体内において1 eV程度の電子の昇圧を行っていることが予測される。そこで本研究では, M. ferrooxydansの持つ高いCO2固定能と昇圧機構に着目し, 生きた微生物を電極触媒として用いた低電圧CO2固定システムについて検討を行った。 初めに、微生物存在下、定電位固定条件における電流-時間曲線の測定を行った。還元電流の増加が100時間後から顕著となった。また、多糖蛍光試薬を用いて電極表面の蛍光顕微鏡観察を行ったところ、電極表面におけるバイオポリマー生成を観測した。 引き続き、電極材料のリニアスイープボルタンメトリー測定を行った。その結果、+0.63 Vより還元電流が観測された。これはM. ferrooxydansが+0.63 Vの電子をCO2固定のためのエネルギー源として利用していることを示している。 この結果は, M. ferrooxydansの昇圧機構に着目することで, 水を電子源とした連続的なCO2還元反応が200 mV程度の極低電圧によって進行可能であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Mariprofundus ferrooxydansの電気培養ならびに電気特性評価に世界で初めて成功した。その結果、細胞が体内の電子エネルギーを1 eV以上も昇圧する特殊な能力を有していることを見出した。これらの結果は、本課題の鍵コンセプトである、極低電圧電源を用いたCO2固定が可能であることを示すものである。
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Strategy for Future Research Activity |
M. ferrooxydansの電気培養条件、エネルギー生産系、ストークの形成機構、酸性多糖の構造と特性の解明、高純度な酸性多糖回収技術を確立する。 同時に、新規な酸素発生電極触媒の開発を行い、A. ferrooxidansならびにM. ferrooxydansをCO2固定化触媒として用いた太陽光利用電気培養槽の構築とその実証実験を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
M. ferrooxydansの電気培養条を行うのに必要な、FTOなどの各種電極材料ならびに電気化学セルの購入を行う。また、ストークの形成機構、酸性多糖の構造と特性の解明を目的とし、各種多糖染色試薬の購入を行う。酸素発生電極触媒として、マンガン酸化物ナノ粒子を用いる。ナノ粒子合成に必要な、各種試薬の購入を行う。また、国内・国際会議に参加し、情報収集ならびに成果発表を行う。
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