2012 Fiscal Year Research-status Report
革新的有機半導体埋め込み技術開発による有機薄膜太陽電池の高効率化
Project/Area Number |
24655168
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
百瀬 健 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10611163)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ナノ充填技術 / 超臨界流体 / 光学材料 / 溶解度 |
Research Abstract |
有機薄膜太陽電池においてシリコン太陽電池並みのエネルギー変換効率を得るべく,p型/n型有機半導体がナノスケールで櫛歯状に相互に貫入した3次元ナノ櫛歯構造が提案されている。本研究では,研究代表者が新たに開発した,超臨界流体を用いた有機分子の高アスペクト比構造への革新的充填技術を発展させ,有機/シリコン3次元pn接合を形成し,従来の有機薄膜太陽電池では達成できなかった高効率電荷分離と広接合面積による高変換効率を実現することを目的としている。充填技術は高温の超臨界流体中に飽和溶解させた有機半導体材料を低温に保持した基板表面に供給することにより可飽和状態の有機分子を基板表面に析出させ薄膜を堆積するものである。基板表面を局所的に冷却できる装置系を新たに構築した。既に所有していた原料供給系に本装置を組み込むことにより従来の装置では難しかった供給流体と基板温度の独立制御が可能となった。本技術は有機半導体分子の超臨界流体中における溶解度の温度依存性を利用するものであり,溶解度データの豊富に揃っているアントラセンをモデル材料とし,検討を進めた。その結果,高い流体供給速度と局所領域での温度勾配を作ることにより流体中における望まない粉体析出を抑制し,成膜を可能とした。また,シリコン表面での分子拡散を左右する基板温度を制御し埋め込み性を向上できることも見出した。これらの結果を最適化するための流体シミュレーション体系を構築中であり,実験との組み合わせにより来年度は制御手法を確立できるものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように,本研究は超臨界流体中における有機半導体分子の溶解度の温度依存性を利用したものであり,精密な温度制御が可能な装置系の構築が研究を左右する。超臨界流体は高い熱伝達係数を有し,局所的に温度を制御することに苦心したが,研究構想を実現する装置系を構築した。また,流体シミュレーションによる計算からのプロセス制御サポート体制も整いつつあることから,次年度はプロセス制御手法が確立できるものと考えている。また,溶解度の測定準備も整いつつあり,最適材料の測定も可能となった。そのため,最適半導体材料の選定も次年度に合わせて行う。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は製膜装置系の構築が鍵となるが,今年度までに装置系の構築が完了した。これにより,供給温度における溶解度と基板極近傍における溶解度の比率(過飽和度),および,超臨界流体の供給速度や冷却領域の製膜への影響を検討し,流体シミュレーション(CFD)を併用することにより,製膜機構の理論的解明と制御手法の確立を図る。また,必要に応じて基板に対し前処理を行い,有機薄膜太陽電池のエネルギー変換効率の向上に必要となる結晶性向上策を検討する。プロセス構築と並行して進めている最適材料の選定に関しても引き続き行い,エネルギー変換効率の向上が見込め,かつ本プロセスとの親和性の高い材料を選定する。最終的には,得られた知見を集約し,n型シリコンナノトレンチに対しp型有機半導体材料を充填し,有機/無機3次元薄膜太陽電池を作製する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度予算に関しては概ね使用計画通りに使用している。今年度20万円程度の繰越があるが,これは今年度購入予定であった有機半導体材料予算である。今年度は本研究の鍵を握る装置系の開発を優先して行ったため,溶解度測定に基づくプロセス親和性の高い有機半導体材料の選定には至らなかった。そのため,来年度は有機半導体材料の溶解度測定に基づく材料選択を行うため,今年度の繰越分を使用し,材料購入費用を多く計上する。なお,溶解度測定系に関しても今年度予算を使用し構築してある。以上より,今年度予算を使用し構築した製膜装置および溶解度測定装置を活用し,来年度はプロセス構築および溶解度測定を行う。そのため,来年度は必要となる消耗物品及び半導体材料に予算を当てる予定である。
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