2012 Fiscal Year Research-status Report
積層化可能な一枚様態有機高分子型光触媒による可視光誘起水分解
Project/Area Number |
24655169
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
長井 圭治 東京工業大学, 資源化学研究所, 准教授 (30280803)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | オルガノフォトキャタリスト / pn接合体 / 可視光光触媒 |
Research Abstract |
人工光合成の中でも、一枚膜の裏表で酸化、還元反応を別々におこなう"Artificial leaf"は、逆反応を抑制する上に設置形態・場所の自由な簡単な構造をもつ。本研究では、これまでの我々の有機半導体p-n接合体の気相中および水相中で用いた研究成果である、光電気化学系における酸素発生と水素発生、更に無バイアス下における高分子膜型有機光触媒による揮発性物質の酸化分解に関する知見をもとに、可視光誘起水分解を、有機半導体により行わせた、"Organic artificial leaves"の構築を目的としている。 本年度は一枚様態高分子光触媒を主に調製を行った。高分子膜上に現有の蒸着装置により、有機半導体を積層させp-n接合体化させた。高分子膜は反応基質である水、プロトン、水酸化物イオンなどの反応基質輸送チャンネルを有することが好ましいので、高配向性親水部疎水部ブロックコポリマーや、市販されていて酸化還元反応の起こりにくいブロックコポリマーであるNafion膜を用いた。光電気化学的手法によりこれらの光誘起酸化反応について検討を行った。 また、最近独自に開発した湿式合成のp-n接合体ナノ粒子が高活性光触媒となることを活用し、高分子膜との複合化も行った。フラーレンナノ粒子が選択的に疎水ドメインの表面に被覆されることを確認した。今後この光電気化学特性や、光触媒特性の検討に入る予定である。 さらに、高配向性親水部疎水部ブロックコポリマーの親水部へ、選択的にアルミニウムフタロシアニンやフラーレンが導入できないか検討を行った。導入プロセスにおける溶媒の効果、浸漬時間の効果を検討し、表面形態、高分子形態についての考察を原子間力顕微鏡を用いてた結果によって明らかにしつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人工光合成の中でも、一枚膜の裏表で酸化、還元反応を別々におこなう"Artificial leaf"は、逆反応を抑制す る上に設置形態・場所の自由な簡単な構造をもつ。本研究では、これまでの我々の有機半導体p-n接合体の気相 中および水相中で用いた研究成果である、光電気化学系における酸素発生と水素発生、更に無バイアス下におけ る高分子膜型有機光触媒による揮発性物質の酸化分解に関する知見をもとに、可視光誘起水分解を、有機半導体 により行わせるため、"Organic artificial leaves"の構築を目的としている。 本年度は一枚様態化させた、一次元的な反応媒体の内部または表面に有機半導体を制御させて形成させることに成功しているため、概ね順調の進展と自己点検した。
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Strategy for Future Research Activity |
一枚様態高分子光触媒を調整する。高分子膜上に現有の蒸着装置により、有機半導体を積層させp-n接合体化させる。高分子膜は反応基質である水、プロトン、水酸化物イオンなどの反応基質輸送チャンネルを有することが好ましく、たとえば彌田研究室で開発された高配向性親水部疎水部ブロックコポリマーや、市販されているブロックコポリマーであるNafion膜を用いる。これまでの光電気化学的研究では水素発生においてはn型C60の表面に白金助触媒が必要なので、それも複合化させる。p型半導体にはコバルトフタロシアニンを用いることによって酸素発生が起こることを確認済みであるので、これらの有機半導体を用いる。 最近開発した湿式合成のp-n接合体ナノ粒子は、高分子膜による反応基質の濃縮無しに光触媒活性を示すほど高活性なので、この方法をCoPc/C60ナノ粒子作製に応用した上で、高分子膜との複合化物も作製する。これらの高分子膜型デバイスの可視光応答水分解を検討する。犠牲剤を用いた水素発生、または酸素発生を調べて、バイアス系と速度論的な比較を行い、無バイアス系の触媒サイクルの成立性を検証する。それらの実験には、現有のガスクロマトグラフィー-質量分析計、XPS装置、ラマン分光装置、電気化学測定装置一式等を駆使して進める。 注目する点として、光照射時間依存性では誘導期が見られることがあるが、本系のような多電子酸化還元系では、そうした現象が予想され、一つの議論のポイントとなる。C60の高還元状態の吸収、この過渡的状態の同定のために近赤外分光光度計を用いる。n型半導体のキャリアである自由電子の発生も近赤外光の反射スペクトルの変化で確認するほか、活性酸素種である一重項酸素のリン光も検出できるので、多電子酸化もしくは多電子還元状態の分光学的同定と対応させて、複雑な機構論を多面的に考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、一枚様態化させた、一次元的な反応媒体の内部または表面に有機半導体のキャラクタリゼーションを進めると共に、これを用いた光触媒反応のモニターに進む。 24年度は効率的に研究費の使用が出来たため、その分の費用を次年度の光照射実験における消耗品(光触媒反応解析のための光源、光フィルタ-、分析装置の消耗品)の費用を多くとることに充てる。
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