2013 Fiscal Year Annual Research Report
熱刺激赤外分光法の開発と有機半導体薄膜におけるキャリアトラップの分子構造解析
Project/Area Number |
24655177
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
古川 行夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50156965)
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Keywords | 赤外分光 / 有機半導体 / 光化学 |
Research Abstract |
有機薄膜太陽電池に使用されている有機半導体薄膜に光照射した際に起こる現象(ラジカル生成,化学反応,キャリアのトラップなど)を解明することを目的として,位置規則性ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)とPCBMの混合物について,赤外分光法を用いて,光照射による化学変化とキャリヤートラップに関して以下のことを研究した.有機ELと太陽電池でバッファー層として使用されているPEDOT:PSSとP3HT:PCBM混合物の2層膜を作成し,室温で,532 nm光を60分間照射したところ,赤外差スペクトルに変化が観測された.1569-1547 cm-1に微分形様のバンド,1148, 1012, 986, 940 cm-1などにピークが観測された.光照射を止めて,30分間経時変化を測定したが,変化はなかった.したがって,光照射で化学反応がおこったか,非常に寿命の長い(活性化エネルギーの大きい)分子種に由来するものであることが分かった.これらのバンドが,P3HT, PCBM, PEDOT:PSSのどれに由来するのかを検討したところ,PEDOT:PSS単一の薄膜で行った実験で,同様な赤外スペクトルが観測されたことから,PEDOT:PSSで起こった変化であることが分かった.次に,78 Kで,PEDOT:PSSとP3HT:PCBM混合物の2層膜に,532 nm光を60分間照射して,赤外スペクトルを観測した.室温で光照射により観測されたバンドが観測された.さらに幾つかのバンドも観測された.昇温してスペクトルの変化を測定した.スペクトルに変化が観測されたが,元の赤外スペクトルの温度による変化が大きく,光誘起バンドの昇温効果ははっきりしなかった.光照射により生成した化学種の活性化エネルギーは,昇温法ではなく,時間変化により測定する方法が適切であることが分かった.
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