2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24655196
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
酒井 孝明 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20545131)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イオン伝導体 / ガスセンサー / 濃淡電池 |
Research Abstract |
製鉄などの金属精錬において、溶融金属中に溶解している酸素、水素および窒素ガス成分の制御は、精錬物の品質に直結するため非常に重要な案件である。しかしながら、窒素ガスをセンシング可能とする窒化物イオン伝導体が未だ見つかっていないため、現時点ではこれらのガスの中で唯一窒素ガスのみセンシングが不可能である。そこで本研究申請では窒素ガスセンシングを可能とする窒化物イオン伝導性を有する材料の創成を行うことを目的とする。同時に、今までその研究進展の無かった窒化物イオン伝導の研究分野に脚光を浴びせ、その学術的進展に寄与することも目的とする。 平成24年度は市販の窒化ケイ素(Si3N4)ペレットを用いて窒素ガス濃淡起電力測定および電流印加による窒素ポンプ実験を実施した。ガスシーリングにはパイレックスガラスパッキンを用い、測定温度としては950度まで行った。その結果起電力は自体は発生するものの、窒素の濃淡差からネルンスト式で計算できる起電力とは全く一致せず、かつ窒素濃淡差の変動にも応答しないものであった。従って、観測された起電力は目的としている窒化物イオン伝導によるものではなく、パイレックスガラスとSi3N4ペレットとの化学反応によって生じた電位である可能性が考えられる。また、電流印加による窒素ガスポンプから窒化物イオン伝導の検証を試みたが、これも十分な電流印加が行えず、その検証は未達成である。また、ガスシーリングをパイレックスガラスではなく金シールにて実施を行った。しかしながら、金シールでは十分なガスシール性が得られなかった。今後、このシーリング性の向上を検討する必要が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述のように、計画書通り、平成24年度は窒化ケイ素(Si3N4)を用いて窒素ガス濃淡起電力測定および電流印加による窒素ガスポンプ実験を実施した。従って、研究申請書に示された通りに窒素ガス濃淡起電力測定と窒素ガスポンプ実験の実施自体はできたものの、窒化物イオン伝導の存在を検証することはできなかった。また、金シールによる実験も実施したものの、ガスタイトな条件での実験はできず、未達である。従って、当初の申請書の計画と比較するにやや遅れているという評価が妥当である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度において未だ窒化物イオン伝導が見出されていない。そこで引き続き、窒素ガス濃淡測定および窒素ガスポンプ実験を行い、窒化物イオン伝導を有する材料の探索を行う。また、ガスシーリングに関しても金シールによるガスタイト性の向上を目指す。そして見出された候補材についてドーパントの制御を行い、さらなる窒化物イオン伝導性の高性能化を目指す。ドーパントとしては窒化物の構成金属元素とイオン半径が近く且つ価数が低いものを選び、これにより窒化物イオン側のサイトの部分欠損を人為的に引き起こさせ、イオン伝導性の向上を目指す。ドーパント量としては1mol%~50mol%まで変化させてサンプル合成を行う。合成したサンプルを用いて濃淡起電力測定を行い、その窒化物イオン伝導性およびイオン輸率を確認する。また、交流インピーダンス四端子法にて窒化物イオン伝導率の評価を行う。この場合、測定雰囲気は基本的に純窒素雰囲気のみで行う。この測定によって、窒化物イオン伝導率のみならずの粒内抵抗、粒界抵抗などの情報も取得し、これにより窒化物内の窒化物イオン伝導においてどの段階が律速であるか等の学術的知見を得る。また、交流以外にも直流四端子法で同時に測定を行い、交流・直流の両側から窒化物イオン伝導率の比較測定を行う。最後に、高い伝導率の得られたサンプルに関し、酸化に対する耐性の評価を行う。この場合、高温領域にて片側を純窒素、もう片側を大気に開放し、大気下でも適切な窒素濃淡起電力が出るかどうかを評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度において、交流四端子測定を計画しているが、この場合インピーダンスメータの取得が必要となる。エレクトロメータ同様本部門でも保有はしているものの、他のプロジェクトに長期占有されているため、新規取得を行う予定である。また、前年同様に必要となる試薬代、高純度窒素ガスおよび高純度ヘリウムガスの購入、さらに次年度で実施するX線回折測定用のホルダー購入も計画している。さらに、国内学会発表を初年度、次年度ともに1回、国際発表を次年度に1回、外国語論文発表を次年度に2報を計画しているため、それへの研究費の使用を予定している。
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