2012 Fiscal Year Research-status Report
プロトン輸送混合導電体を利用した新規な低エネルギー消費型水素分離膜
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24655197
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
寺岡 靖剛 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (70163904)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 水素 / 分離膜 / 混合導電体 |
Research Abstract |
本研究は、100℃以下で作動するプロトン導電体/電子導電体コンポジット膜による100%水素選択性を持った水素分離膜の開発とその学術基盤の確立を検討することを目的としており、以下の結果を得た。 コンポジット膜の作製においては、炭素ペーパーを導電体として用い、その空隙をプロトン導電体であるナフィオン分散溶液で充填した後に4.8 MPa, 145 ℃,3分の条件でホットプレスすることにより、酸素、窒素に対する物理透過が観測されない緻密膜が得られることを明らかにした。また、ナフィオン分散溶液とカーボンブラック(CB)粒子の混合物を製膜する方法について検討し、CB含有量が30wt%程度からCB粒子が連結して電子導電相として働くパーコレーション型混合導電体膜として機能することを見出した。 水素解離・再結合触媒としてはPtが有効で、Ptブラックを用いた場合は4.8 MPa, 132 ℃,3分の条件でのホットプレスにより触媒と膜の密着性が向上して触媒として有効に働くこと、ナフィオン分散溶液にPt/C触媒を混合後に膜表面に塗布する方法により三相界面拡大のための触媒層が作製できることを明らかにした。 作製したコンポジット混合導電体膜にPt触媒層を塗布した膜の水素透過には膜両面にPt触媒が必要であること、ナフィオンのイオン導電性を維持するために供給するガスは加湿する必要があること、水素透過速度は水素濃度とともに増加するが10%以上では依存性が小さくなる傾向があること、Pt触媒量には最適値があること(Pt/C-ナフィオン触媒では2 mg-Pt/cm2程度)、Ptブラック触媒に比べてPt/C-ナフィオン触媒ではPt量を1/4程度に低減できること、膜厚約0.3-0.2 mmの範囲において膜厚の減少につれて水素透過速度が増加することなどを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ研究計画通りに進んでおり、平成25年度の研究を推進するに十分な基礎的知見を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
コンポジット混合導電体膜については、平成24年度に見出したイオン導電体充填型膜とパーコレーション型膜について、組成、作成方法の最適化、炭化水素系のプロトンや水酸化物イオン導電材料の適用、膜厚制御法の確立を行うとともに、最適なコンポジット混合導電体膜を選択して透過速度の長期経時変化を測定し、安定性を評価する。また、平板型やチューブ型などの形状の検討を行う。 水素解離・再結合触媒については、透過性能が触媒量、塗布状態に強く依存することからそれらの最適化を図るとともに、Pd, Ni等のPt代替触媒の検討を行う。また、本研究で開発を目指す低温作動型水素透過膜の応用分野としては、光触媒による水の完全分解で生成する水素・酸素混合ガスからの水素分離が想定される。この場合、触媒が水素を酸化しないことが必須であり、触媒材料探索に加え、高分子、シリカゲルなどを素材にした水素選択透過層による触媒の被覆を検討する。 作製したコンポジット混合導電体膜に触媒層を塗布した膜の水素透過能の評価、水素供給側に酸素、一酸化炭素、二酸化炭素を共存させることによる水素透過に対する他ガスの共存効果の解明、水素透過機構に関する知見を得るために、コンポジット混合導電体膜のプロトン導電性、電子導電性を測定し、それと水素透過性能との関連を精査する。 得られた成果をもとに、原理の検証、材料開発指針を確立し、新たな分離技術としての確立と応用研究への課題抽出を行うとともに、「混合導電体利用低エネルギー型ガス分離」の学理と技術について総括する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は設備備品は導入せず、経費は研究推進のための消耗品費と成果発表、情報収集のための旅費に用いる。なお、平成24年度に研究の効率化、節約化等により発生した繰越金は、平成25年度の物品費に組み込み有効に利用する。 平成24年度からの繰越金261,189円を含んだ直接経費1,461,189円のうち,旅費として400,000円,消耗品費として1,061,189円を使用する予定である。
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Research Products
(1 results)