2012 Fiscal Year Research-status Report
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24655198
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
中戸 晃之 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10237315)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 無機ナノシート / コロイド液晶 / 擬似生体膜 / 電場印加 / 流動制御 |
Research Abstract |
本研究の目的は、無機層状結晶を剥離させた超薄層(ナノシート)のコロイドが形成するナノシート液晶を、生体膜類似の流動性膜として機能させることである。24年度は、コロイド分散したナノシートの液晶に対し、電場を印加してナノシートを配列させ、膜状の集合構造を得ることを目標とした。 われわれがこれまで研究してきたニオブ酸ナノシート液晶を用い、この液晶の電場配向によって流動性の膜を作製することを試みた。我々は、ニオブ酸ナノシート液晶中で、個々のナノシートが電場と平行に配向する性質を見いだしている。そこで、ナノシートを溶媒の流れを妨げる向きに配向させ、ナノシートを溶媒中でピン止めすることを試みた。本系はコロイドであるので、ナノシートは重力による溶媒流に伴って移動する。よって、ピン止めのためには、重力と垂直に電場を印加すればよい。 蛍光色素を吸着させたナノシート液晶を薄層セルに注入し、色素の蛍光によってナノシートの移動をモニターしたところ、電場印加下では沈降が抑制されることが見いだされた。ナノシート液晶は、室温で静置(インキュベーション)することで、ナノシートが集合したドメインを形成し、インキュベーション時間を長くするほどドメインも大きく成長する。電場印加による沈降抑制効果と液晶のドメイン成長との関係を調べたところ、液晶ドメインが小さい試料の方が、大きい試料よりも沈降の抑制が顕著であった。これは、大きく成長したドメインでは、ドメインの自重による沈降が起こるためと推定される。 以上より、ナノシート液晶への電場印加により、溶媒中でナノシートをピン止めできる可能性のあることがわかった。まだ完全な膜化には至っていないが、電場印加条件やドメイン成長を最適化することで膜化につなげられると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画予定していたナノシート液晶の膜化が未達であるので、やや遅れているとした。しかし、このステップは当初から研究の難所と認識しているものであり、かつ目標達成につながると思われる結果も得られているので、致命的な遅れではない。 ナノシートの膜化は、電場でナノシート液晶をピン止めすることで行わせようと計画している。現状は、電場印加によって流下速度を低下させることには成功しているが、完全なピン止めには至っていない、という状況である。よって、研究の方向性としては問題ないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ナノシート液晶への電場印加とナノシートの沈降との関係をより詳細に調べ、ナノシートをピン止めできる条件を探し出す。ナノシート液晶の条件(粒径、濃度、液晶相分率など)と電場印加条件(電界強度、周波数など)の双方を変化させ、また個々のナノシートの動きを超解像ズームマイクロコープで追跡することで、ナノシート液晶がピン止めされ、膜化する条件を見出す。 膜化を達成した後は、ナノシート配向の多段制御を検討する。すなわち、ON-OFFの二値ではない、多段階の膜の開口率制御を行う。電場印加条件の制御によって、ナノシート配向を連続的に変化させられるか検討し、さらに、ニオブ酸と粘土の2種類のナノシートからなる相分離型ナノシート液晶の利用も検討する。相分離型ナノシート液晶では、それぞれのナノシート相が系内でミクロドメインを形成する。そのため、2種類のドメインが電場に対して違った応答を示せば、2種類のミクロドメインの片方のナノシート配向を変えられることになる。これを開口率変化につなげる。 また、開口率制御の検討と並行して、膜の物質透過特性を調査する。色素の水溶液や色素で修飾した微粒子などのプローブ物質が、ナノシート液晶膜を透過する特性を観察し、透過特性が膜の影響を受ける粒子サイズ域を見出す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額が発生した主因は物品費が当初計画より少なかったためである。当初計画では、電場印加は研究室現有の装置を用いる一方、現有の偏光顕微鏡に付設する高倍率カメラを購入し、電場印加下での液晶観察を行う予定であった。しかし、現有装置では対応できない電場印加を行う必要が生じたため、電場印加装置を購入することとした。一方、観察装置については、当初予定していた偏光顕微鏡付設カメラでは十分に対応できない高分解能の観察が重要であることがわかったため、購入を中止した。電場印加装置と高倍率カメラのの差額が未使用額に相当する。 次年度の研究計画では、電場印加下での高分解能観察を行うことが重要となる。このため、未使用額と合わせて超解像ズームマイクロスコープを購入し、必要な観察条件に対応させる予定である。
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