2012 Fiscal Year Annual Research Report
単一分子分光による高分子ダイナミクスの空間相関解析
Project/Area Number |
24655207
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青木 裕之 京都大学, 先端医工学研究ユニット, 准教授 (90343235)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 1分子計測 / 単一高分子鎖 / 薄膜 / ガラス転移 / 分子運動 |
Research Abstract |
本研究では、分子運動計測のための新しい高感度顕微鏡システムの開発と、これを用いた高分子のガラス転移の研究を目的としている。幅広い時間分解能で分子一個の位置・配向を検出可能なイメージング技術の開発を行った。蛍光顕微鏡によるデフォーカス計測は、一枚の蛍光画像から分子の位置だけでなく極角と配向角を同時に取得可能な手法である。しかしデフォーカス観察において複数の分子を測定する場合、分子同士が数マイクロメートル以上離れた状態でなくてはならず、近接した分子の測定を測定を行うことができなかった。そこで顕微鏡光学系にダイクロイックミラーを用いた画像分離光学系を導入し、発光色が異なる分子であれば、近接していてもそれぞれを独立に観察可能なシステムを構築した。また色素からの発光波長だけでなく、複数波長の励起光源を使用可能なように光学系の改良も行った。このようなデフォーカス顕微鏡システムを開発することで、複数種の分子について位置分解能10 nmで分子の並進運動を、角度分解能3°で回転運動を追跡することを可能にした。一方、デフォーカス顕微鏡においては時間分解能が10ミリ秒程度であり、これ以上速い分子運動を捉えることはできない。そのため、高い時間分解能を有するアバランシェフォトダイオード(APD)検出器を用いた偏光分離検出系を併設することでマイクロ秒の時間分解能を達成した。構築したシステムを用いてポリブチルメタクリレート(PBMA)のガラス転移点(20℃)近傍の分子運動を解析した。その結果、PBMAは数秒程度の相関時間を有する分子運動性を示し、さらにその運動性は分子毎に大きく異なり、動的に不均一であることが分かった。分子間の運動状態の相関を解析したところ、不均一性の空間スケールは少なくとも100 nm以下であることが示唆された。
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