2013 Fiscal Year Research-status Report
ドーパミルポリーγーグルタミン酸の効率合成と環境応用への挑戦
Project/Area Number |
24655209
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
芦内 誠 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (20271091)
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Keywords | 環境材料 / 環境技術 / 環境機能 / バイオポリアミド / 化学改質 |
Research Abstract |
当初計画に従い、ドーパミルPGA(dmPGA)の金属応答性を調べた。また、人工イクラ基材として有名な金属応答(結合)性バイオポリマー「アルギン酸」と天然型PGAをコントロールに用いた。前例によれば、金属イオンの補足(結合)と物性変化の間には密接な関連性がある。実際、金属の結合に伴って「流動性ゾル→ゲル→固形沈殿」に至る変化が認められる。そこで、上述計3種の高分子溶液に、Li+、Cs+、Ca2+、Sr2+、Co2+、Ni2+、Al3+を添加し変化の推移を観察した。結果、dmPGAの応答性は他と比べて明らかに鋭敏であった。二価イオン:コントロールでは変化のなかった低濃度域(電気導電率,~30μS/cm)でもゲル/固形化が進む。三価イオン:全試料で応答性が認められたものの、鋭敏さには大きな差がある;dmPGAは他の高分子試料が応答しはじめる金属濃度の約1/3程度で顕著な変化を示した。次いで、変化の認められたdmPGA試料から高分子画分を調製し金属分子が結合しているかどうか分析した。特に固形化まで進んだ試料では、金属結合機能を有する官能基とほぼ等モルの金属分子が含まれていたため、拡散希釈された金属含有廃棄物(主に溶液)の浄化への応用に期待が高まる。以上、有価金属(Co2+、Ni2+等)回収や有害金属(Sr2+等)捕捉に係るdmPGAの性能はバイオベース環境機能材料の中でも特に優れていることが判明したが、今回はこれに止まらず、活性炭の細孔表面をdmPGAで薄くコートした複合材料の開発にも取り組んだ。dmPGAの物性変化に頼る従来工程とは異なり、活性炭自体の沈降性が利用できるため、より低濃度の金属分子の選択分離まで可能になる。実際、電気導電率を指標とする簡易測定の段階で既に金属イオン分離現象が認められている。dmPGAの用途性拡大(機能性被膜基材等)に繋がりうる重要な発見といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、ドーパミルPGA(dmPGA)の材料機能について精査することを掲げたが、実績概要に示した通り、初期想定を超える性能や興味深い機能が次々と発見され、なかでも、金属応答(結合)性に係る調査結果は、dmPGAが金属捕捉基材として非常に有望であることを示唆していた。将来的には、有価金属(Co2+、Ni2+等)の回収や有害金属(Sr2+等)の除去に役立つ基幹材料としての応用が進むものと期待される。本実験では、さらなる機能性向上と実用材料化を目指し、活性炭の細孔表面をdmPGAで薄くコートした複合材料の開発にも取り組んだ。結果「dmPGA修飾型活性炭」の開発に成功するとともに、優れた金属イオン分離機能を有していることを発見した。これを機に、dmPGAの単独利用を条件とする従来型の調査研究から、今後は複合利用(機能性被膜基材等)まで視野に入れたより実践的な研究が求められるようになると思われる。以上、ここで判明したdmPGAの機能性/利用性に係る知見は、当初計画で想定していた水準を大きく超えるものも少なくなかった。故に、現在までの達成度でいえば「当初の計画以上に進展している」の評価に十分値するとの結論に達した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、ドーパミルPGA(dmPGA)が備える三つの特性「自己修復性・金属吸着性・表面接着性」に着目し、アクリル板や機能紙(ナノファイバー)表面に新たな性能を付与するコーティングゲルとしての応用性について調査する。具体的には、紫外線やX線(γ線)等の有害電離線に対する遮蔽性の創出と各新材料間での性能比較を実施する。例えば、放射性ストロンチウムを吸着して分離するとともに、そこから放出される電離線の拡散を遮蔽する能力が判明すれば、重大汚染環境を修復・再生する画期的な新素材としての応用展開が見えてくる。平成25年度中に完成させた「dmPGA修飾型活性炭」もあわせて環境機能(修復)材料としての実用性について評価する。 一方、平成25年度計画を開始する際、新課題として取り組みを決めた「dmPGAの合成メカニズムに係る調査」につき、予備的ではあるが、極めて重要な情報を得ることができた。具体的には、dmPGA合成の成否と効率は、前駆体であるPGAICの物性に支配されていた。実際、PGAICは基本的に多形性を示す超分子素材であった。特段に顕著な性質としては独立した融点が複数存在する(低温域,~30℃;高温域,~60℃)点であり、これを制御する方法は見つかっていない。dmPGAゲルの合成には低融点PGAICの方が適している一方、高融点PGAICではゲル化を阻害しプラスチック性を誘導する傾向が認められたことから、ここでは、低融点PGAICの形成を促進する化学物質の探索とそれを利用した良質PGAIC前駆体の合成、並びにdmPGAゲルの超効率合成(該使用PGAの事実上の損失率を限りなくゼロに近づける技術)を完成させ、dmPGAゲル供給システムの充実化を図る。
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Research Products
(17 results)