2012 Fiscal Year Research-status Report
水-氷(融液ー結晶)界面の分子レベル直接観察:超高感度位相差顕微鏡の開発
Project/Area Number |
24656001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐崎 元 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (60261509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 義純 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (20113623)
長嶋 剣 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60436079)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 水-氷界面 / 融液-結晶界面 / 分子レベル直接観察 / 超高感度位相差顕微鏡 |
Research Abstract |
気相や溶液からの結晶成長とは異なり,融液からの結晶成長は桁違いに速いため,結晶と融液の界面を分子レベルでその場観察することに成功した例はまだない.氷と水の界面を分子レベルでその場観察するために,高速度でその場観察が可能な位相差顕微法を,下記の改良によって超高感度化することを試みた. 位相差顕微法では,リングスリットを通った照明光を試料に照射した後,1)試料を透過した直接光を,対物レンズ後ろ焦点面で,輪帯フィルターを用いて位相を1/4波長だけずらすとともに減光する.また,2)試料からの散乱光はそのコントラストを形成する周期成分に応じて,特定の角度に回折するため,対物レンズによって結像するべく屈折させる.1)の処理後の直接光の強度と,2)の処理後の回折光の強度をマッチさせることができれば,位相差顕微法で得られる最大の位相差コントラストを得ることができる.本研究では,リングスリットのスリット幅と,対物レンズ後ろ焦点面の輪帯フィルターの幅をできるだけ細くすることで,直接光の強度を減じて回折光の強度とマッチさせ,位相差顕微法の最大のコントラストを引き出し高感度化することをねらった.また,輪帯フィルターの幅を細くすることで,回折光をできるだけ多く取り込み結像コントラストも向上させることができる. 平成24年度は,そのために,幅を通常の1/4に細くし,かつ透過率を6%に設定した輪帯フィルター付きの対物レンズ(倍率は10倍)を特別設計・作製した.本レンズが平成25年3月29日に納品されたため,平成24年度ではなく平成25年度に予算執行することとなったが,当初の目的であった,位相差顕微鏡の超高感度化の一番重要な部品の開発と作製を,平成24年度に終えることが出来た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特別設計・作製した輪帯フィルター付きの対物レンズの納品が平成25年3月29日になってしまったために,平成24年度の物品費を大幅に平成25年度にまわすことになったが,位相差顕微鏡の超高感度化の一番重要な部品の開発と作製自体は,平成24年度中に終えることが出来た. また,平成25年に使用を予定している「温度均一型」のその場観察チャンバーも,当研究室が現有しているものにさらに改良を加え,氷結晶の成長観察実験がスムースに行える段階に達している. 以上より,研究計画はおおむね順調に進行していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
1)まず,「温度均一型」の自由成長界面観察装置(現有)を用いて観察を試みる.水を満たしたガラスキャピラリーの一端を冷媒を用いて冷却すると,多数の氷結晶核が生成する.しかし,生成した氷多結晶はキャピラリー中で成長するに従い幾何学的選別を受けるため,最終的にはキャピラリー先端に氷の単結晶が1つだけ生成する.キャピラリーを回転させることで,所定の結晶面の成長をチャンバー下部から光学直接観察する.この実験では,水・氷界面をいかにしてゆっくりと成長させるかは,0℃近辺でいかに過冷却水の温度を精密に制御できるかにかかっている.チャンバー内部の過冷却水の温度は±0.005℃の制度で制御できるため,本観察装置を用いて十分な分子レベル観察が出来るものと予想している. 2)温度均一型観察装置を用いても過冷却水からの氷結晶の成長が,分子レベル観察を行うためには速すぎる場合には,さらに「温度勾配型」の観察装置を新規に作成する.観察チャンバーの上部には氷のへテロエピタキシャル成長のための種結晶として有名なAgI単結晶を配置する.そして上部を冷却し,下部を暖めると,上部のAgI種結晶から氷のへテロエピタキシャル成長が開始する.しかし,チャンバー内部の温度勾配中に存在する,過冷却度ゼロの位置で氷結晶の成長は自動的に停止する.そのため,氷の結晶成長が停止する前後を観察することで,分子レベルの表面モルフォロジー観察を実現するために十分遅い成長・融解状態を実現できると予想している.なお,温度配置は,温度の不均一に基づく密度対流が起こらない配置となっている. 以上の2方法を駆使して,未だ誰も成功していない融液・結晶界面の分子レベル直接観察に挑む.なお,分担者の古川は融液・結晶界面がどのように観察されねばならないか考察し,長嶋は佐崎と共に観察実験を実際に行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に開発・作製した,本研究の最大のポイントとなる「超高感度位相差対物レンズ」(774,900円)の納品が平成24年3月29日になってしまったため,平成24年度の物品費を大幅に平成25年度に持ち越した(持ち越し額:928,164円).しかし,対物レンズの支払いを平成25年4月に行うため,実質的な持ち越し額は153,264円でしかない.そのため,研究費の使用計画は,交付申請書に記した当初の計画とほとんど変更はない.
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Research Products
(1 results)