2012 Fiscal Year Research-status Report
垂直磁化薄膜における異常ネルンスト効果の微視的な機構解明
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24656002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水口 将輝 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50397759)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 熱磁気効果 |
Research Abstract |
近年、電子のスピンと熱の相関が注目されている。スピンの自由度を取り入れることによって、高効率で多機能性を有する新しいタイプの熱電変換素子開発の可能性がある。一方、熱磁気効果の一つであるネルンスト効果は古くから知られた効果であるが、いまだその起源にはよく分からない点が多い。本研究では、高い磁気異方性を示すL10型FePt規則合金薄膜の異常ネルンスト効果を詳細に調べることにより、異常ネルンスト効果のミクロスコピックな機構の解明を目指す。また、異常ホール効果との対比を行うことにより、熱流のキャリアと誘導起電力の関係を明らかにする。本研究を通して熱磁気効果の総合的な理解を目指すことで、現行の熱電変換素子を凌駕する新たな素子の開発につなげる。本年度は、L10型FePt薄膜の異常ネルンスト効果の温度依存性を調べた。その結果、温度の減少にともない、異常ネルンスト係数も著しく減少することが分かった。また、室温から100 K付近までは磁気異方性エネルギーが大きいほど横ゼーベック係数が小さく、100 K以下ではほぼゼロに漸近することがわかった。さらに、異常ネルンスト効果と異常ホール効果を比較し、モットの関係式による評価を行ったところ、低温においてはモットの関係式によりよく説明できることがわかった。一方、高温においては、ネルンスト効果には電荷スピン流以外のキャリアの寄与が示唆された。これらの結果は、異常ネルンスト効果のミクロスコピックな機構の解明に資するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
L10型FePt規則合金薄膜における異常ネルンスト効果の測定と、その特性評価がほぼ計画通りに進んでいる。また、異常ネルンスト効果の理論的解析も進んでおり、その進捗度もおおむね順調であるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、FePt薄膜の膜厚依存性や磁気異方性定数依存性を詳細に調べる。FePt膜厚が薄くなると表面/界面における電子散乱の割合が増加するため、熱のキャリアとして電子がどの程度寄与しているのかを見積もることができると考えられる。また、磁気異方性は、スピン軌道相互作用とだけでなくスピン波の励起ギャップとも強い相関を持つため、異常ネルンスト効果の磁気異方性定数依存性を調べることにより、スピン波の寄与を見積もることが可能である。さらに、FePt以外の材料の垂直磁化薄膜についても同様に異常ネルンスト効果の測定を行い、異常ネルンスト効果の起源の解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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