2013 Fiscal Year Annual Research Report
垂直磁化薄膜における異常ネルンスト効果の微視的な機構解明
Project/Area Number |
24656002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水口 将輝 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50397759)
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Keywords | スピントロニクス / 熱磁気効果 |
Research Abstract |
近年、電子のスピンと熱の相関が注目されている。スピンの自由度を取り入れることによって、高効率で多機能性を有する新しいタイプの熱電変換素子開発の可能性がある。一方、熱磁気効果の一つであるネルンスト効果は古くから知られた効果であるが、いまだその起源にはよく分からない点が多い。本研究では、高い磁気異方性を示すL10型FePt規則合金薄膜の異常ネルンスト効果を詳細に調べることにより、異常ネルンスト効果のミクロスコピックな機構の解明を目指す。また、異常ホール効果との対比を行うことにより、熱流のキャリアと誘導起電力の関係を明らかにする。本研究を通して熱磁気効果の総合的な理解を目指すことで、現行の熱電変換素子を凌駕する新たな素子の開発につなげる。本年度は、L10型FePt薄膜の異常ネルンスト効果における磁気異方性エネルギー依存性を詳細に調べた。磁気異方性定数の異なるFePt薄膜について、異常ネルンスト効果の大きさを比較したところ、全ての温度領域について、磁気異方性が小さい試料の方が異常ネルンスト効果の大きさは大きいことが明らかになった。これらの結果は、FePt薄膜内にスピン波が励起され、スピン波スピン流が異常ネルンスト効果に寄与していることを示唆する結果である。続いて、FePt薄膜の膜厚依存性を調べた結果、7 ~ 40 nmの範囲では膜厚に依存せず、その大きさはほぼ一定であるのに対し、膜厚7 nm以下では異常ネルンスト効果の大きさが増加することがわかった。さらに、異常ネルンスト効果の材料依存性を調べたところ、材料のスピン軌道相互作用の大きさと異常ネルンスト効果の大きさに相関が見られた。これらの結果は、新しいタイプの熱電変換素子開発につながる知見である。
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