2012 Fiscal Year Research-status Report
強磁性金属ナノ粒子における光局在効果と低エネルギー磁化反転方式の研究
Project/Area Number |
24656010
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
清水 大雅 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345170)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 強磁性体 / 金属 / ナノ粒子 / 磁気光学効果 / 磁化反転 |
Research Abstract |
強磁性金属ナノ粒子における光局在効果と低エネルギー磁化反転方式を実現するため、平成24年度は強磁性金属ナノ粒子を製膜し、その磁気光学効果を評価した。酸化マグネシウム基板、石英基板上に電子ビーム蒸着法によって自己組織的に強磁性金属(Fe, Co)ナノ粒子を製膜した。名目上の膜厚は1.5, 4, 6, 13 nmとした。また、製膜時の膜厚を増やすことでFe, Coの薄膜(膜厚20 nmの連続膜)を形成した。光局在効果の比較のため、同じ方法で非磁性のAuのナノ粒子を製膜した。本研究の一部は東北大学金属材料研究所との共同研究によって行われた。 作製した試料の波長400-1600nmの光透過スペクトル、及び、ファラデー効果のスペクトルを測定した。Auの試料は波長600 nm付近において光局在を示す透過率の極小を示した。一方、強磁性金属のFeとCoナノ粒子試料は全波長範囲にわたって平坦な光透過率を示した。作製したFe, Coナノ粒子試料では光局在効果は十分ではないことが明らかになった。Fe, Coのファラデー効果を測定したところ、0.1~1°のファラデー回転角、及び、楕円率を観測した。膜厚に比例してファラデー回転角と楕円率がスペクトル全体で大小する磁気光学効果の理論式からずれ、膜厚の違いによってファラデー回転角と楕円率の最大波長が異なることが明らかになった。以上の現象を説明するために、古典的な電子の散乱モデルを用いてFe, Coのナノ粒子の磁気光学スペクトルを計算した。計算の結果、電子の平均自由工程がナノ粒子の膜厚と同等になると、非弾性散乱によって比誘電率、特に、ファラデー効果の大小に関係する比誘電率の非対角項が大小することが明らかになった。計算された比誘電率を基に実験結果を再現した。 以上の研究成果は1件の査読付論文(英文)、1件の国際会議論文、7件の国内会議論文として発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は強磁性金属ナノ粒子の光局在効果を明らかにすべく、電子線ビーム蒸着法によって自己組織的にFeとCoのナノ粒子を作製を試み、作製工程の確立に成功した。FeとCoのナノ粒子の波長400nmから1600nmの透過率と磁気光学効果を評価し、光局在効果を明らかにした。光透過率の評価によれば、強磁性金属ナノ粒子そのものの光局在効果を大きくすることは困難であることがわかった。一方、強磁性金属ナノ粒子の磁気光学スペクトルが膜厚によって非相似的に変化することを観測し、そのメカニズムを明らかにした。したがって現在まで、強磁性金属ナノ粒子の作製工程を確立し、それらの磁気光学効果の変化を生むためのメカニズムを明らかにしたことが現在までの達成点であり、研究は概ね進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究によって、強磁性金属そのものの光局在効果によって磁気光学効果を大きくすることは困難であることが明らかになった。平成25年度は、大きなファラデー効果を示す磁気光学材料である磁性ガーネット上に金属(Au)のナノ粒子を製膜し、金属(Au)のナノ粒子による磁性ガーネットの光局在効果と磁気光学効果の増大を目指す。磁性ガーネットは、Y3Fe5O12などと表される酸化物のフェリ磁性体である。Yの一部をBiで置換したり、Feの一部を他の金属で置換することで磁気光学効果が大小することが報告されている。磁性ガーネットの磁気異方性は置換する材料やキャリア濃度の大小によって変化することが知られている。平成26年度は磁性ガーネットにおける光局在効果による磁気光学効果の増大と、試料の作成法や外場(光、電場)による磁気異方性の制御を通じた磁化反転を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
磁性ガーネットにおける光局在効果、磁気光学効果の増大とその磁気異方性を制御するために、平成24年度中に製膜装置の仕様や材料を確定し、平成25年度に材料を購入することとしたため、当該研究費が生じた。平成25年度は、磁性ガーネットの製膜のための石英基板や非磁性ガーネット基板、有機金属製膜法による磁性ガーネット製膜のための原料を購入する。また、磁性ガーネットに光局在効果を起こすための金属(Au)の原料を購入する。磁性ガーネットの磁気異方性の制御のために、半導体レーザ光源を導入する。
|
Research Products
(13 results)