2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656012
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
山本 勲 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (40242383)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 磁性体 / 強磁性 / 磁場効果 / 過冷却液体 / 対流抑制 |
Research Abstract |
本研究では融点とキュリー温度の近い合金を作製し、強磁場を印加するこにより安定した過冷却状態を実現することで強磁性液体の実現の可能性を追求する。前者は低融点金属と強磁性遷移金属の合金作製によって、また後者は融液の冷却を強磁場下で行なうことで磁場効果によって準安定相の過冷却状態を低温まで維持することが可能であると考えている。過冷却液体で観測報告がある巨大クラスターに磁気秩序が存在するならば、強磁性あるいは超常磁性などの準強磁性的な磁性の発現が期待できる。 本年度は、低融点金属と強磁性遷移金属に関しての調査を進め、低融点金属として水銀、強磁性遷移金属としてガドリニウムを選択し、2 元系合金の作製を試みた。Gd-Hg 系合金の作製に関する過去の論文は少なく、アマルガムの作製方法なども参考に、電気分解および電気炉による加熱によって合金作製を試みた。電気分解では水銀電極とGdCl3水溶液を用い、様々な電圧と時間をパラメータにして合成を試みたが、目的の化合物は得られなかった。加熱では雰囲気ガスと反応温度、反応時間をパラメータにして合金を作製した。Gd金属粉末は特に酸化されやすいので、原料を目的のモル比でガラス管に真空封入した後に加熱することで、黒灰色の合金を得た。その合金も酸化されやすく、大気中で水銀と酸化ガドリニウムに分解するため、酸化を防いでX 線回折を行った。文献値との比較により得られた合金はGdHg6 であったと推定された。 さらに、小さな試料について精度の良い磁気測定を行えるようにパルス強磁場を用いた測定系を構築した。また、強磁場による微小粒子の運動に関してシミュレーションを行い、対流の抑制効果について予備的な測定を行った。室温の水銀について、磁束密度0.5T程度で顕著な対流抑制効果があらわれることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
低融点合金を実現するために、予定したGd-HgとGd-Gaのうち前者について実験を行った。水銀は融点のもっとも低い金属であり、これと組み合わせて強磁性を発現させるために室温で強磁性を示す4つの元素(Fe, Co, Ni, Gd)からGdを選択した。水銀が3d遷移金属と水銀化合物(アマルガム)を生成しないことが既知であるためである。また、4f希土類金属の一部と水銀が1:6の合金を形成するという報告がなされている。Gd-Hg系合金について、特にHgリッチな相について過去に作製の報告が極めて少なく、合金の物性も文献によって一致しない。本研究では、強磁性種Gdを含む水銀化合物GdHg6の合成を試み、合金作製に成功した。しかしながら、液体ヘリウムの世界的な供給不足により、超伝導マグネットが一部稼働せず、磁気測定を行えなかった。過冷却条件の探索については、強磁場による対流の抑制効果について予備的な測定を行い、磁束密度0.5T程度で顕著な対流抑制効果を観測した。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたGd-Hg系合金(GdHg6)の磁気測定および融点測定を行うとともにGdとHgの組成比を変えた合金を作製し特性を評価する。他のGd系合金については、新たにGd-Ga系合金を作製し、同様に実験を行う。Gd以外の強磁性種として3d遷移金属を含む多元低融点合金を作製する。FeとNiは融点が高いため低融点合金は得難いので、Co系合金を検討する。 融点測定とキュリー点測定を行い、これらが近い合金を強磁性液体の候補として選択する。より深い過冷却を実現する磁場環境の条件を探索しつつ、強磁場中で相変化(凝固)と磁気測定を同時に計測する方法を確立し、過冷却状態での磁気測定を行う。実験結果を総合的に考察し、強磁性種を含む過冷却液体がキュリー温度以下でどのような磁性が発現するかを追求する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新たに購入する備品の予定はない。消耗品は主に合金の原料に使用する。強磁性元素としてFe, Co, Ni, Gdを、低融点金属としてHg, In, Ga等を購入し、これらで合金を作製する。実験では毒性の試料を取り扱うため、これらに習熟した研究員を雇用する。ほかに、ガラス器具や真空配管、電子部品、各種ガス購入や超伝導磁石のメンテナンス費用にあてる。さらに研究成果を公表するために、国内外での会議での発表のための旅費と論文投稿に使用する。本年度は国際的なヘリウムの供給不足が起こり、予定していた実験を行なうための寒剤または不活性ガスとしてのヘリウムを購入できずに予算に残額を生じた。来年度はヘリウム不足が解消に向かうと見込まれるので、購入し実験に使用する。
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Research Products
(3 results)