2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656012
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
山本 勲 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (40242383)
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Keywords | 磁性体 / 強磁性 / 磁場効果 / 過冷却液体 / 対流抑制 |
Research Abstract |
本研究では融点とキュリー温度の近い合金を作製し、強磁場を印加することにより安定した過冷却状態を実現することで強磁性液体の実現の可能性を追究する。前者は低融点金属と強磁性金属の合金作製によって、後者は融液の冷却を強磁場下で行なうことで磁場効果によって準安定相の過冷却状態を低温まで維持することが可能であると考えている。過冷却液体で観測例がある巨大クラスターに磁気秩序が存在するならば、強磁性あるいは超常磁性などの準強磁性的な磁性の発現が期待できる。 本年度は、低融点金属と強磁性遷移金属の合金として、昨年に引き続きGd-Hg系と新たにCo-Sn系の研究を進めた。Heの国際的な供給不足に加えて、本学で共用使用しているSQUID磁気測定装置が故障したので十分な測定ができなかったが以下の成果を得た。 Gd-Hg系の相図にはHgリッチな合金の記載がなかったが、GdHg6の組成比でAr雰囲気下で数時間700Cで加熱することで再現性よく単相の合金を作製する条件を見出した。生成物は金属光沢のある銀色の金属であるが、空気中では酸素と容易に反応し合金は分解した。不活性ガス中でのX線回折により、LaHg6と同じ結晶系の斜方晶であること、a=9.574A, b=28.537A, c=4.968Aを決定した。室温で常磁性であり、磁化率は0.16 J/T2/kgであり常磁性Gdの100倍程度であることから、低温で強磁性に転移する可能性がある。 Co-Sn系については既知のCoSn3に加えてCoSn4, CoSn5の調整を試みた。Snリッチな合金はアニールするとSnと安定なCoSn3が析出し目的の組成の合金は得られなかった。磁気測定によりCoSn3はTc=294Kの強磁性体であり、飽和磁化Ms=15 mJ/T/kgであった。融解温度は643 Kであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
強磁性液体金属を実現するためには、低融点強磁性金属の作製、磁場中大深度過冷却の達成、低刺激迅速磁気測定の3つの要素研究が必要である。本研究ではそれらのうち、低融点強磁性金属の作製に重点を置いて研究を行った。低融点強磁性金属として低融点金属と強磁性元素の組み合わせからGd-Hg系とCo-Sn系の低融点リッチ合金をを作製し、磁気測定により磁性を評価した。相図においても未開拓な組成領域であり、製法も文献に少ないが、工夫を重ね再現性のある製法を確立した。しかしながら液体ヘリウムの世界的な供給不足等により超伝導マグネットが一部稼働せず、磁気天秤を自作して磁気測定に供したが温度変化範囲、磁束密度範囲、磁気測定精度において十分ではなかった。静磁場による溶融金属の対流抑制効果を認めたが、過冷却液体の凝固抑制効果との関連を深く追及できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
得られたGd-Hg系合金(GdHg6)とCo-Sn系合金(CoSn3)、さらに新たに作製中のMn-Bi系合金と合わせて、磁気測定および融点測定を行なう。磁気測定用の新装置はH26年度末に納品を終え、4月末現在で調整中、6月に学内供用開始の予定であるので、10月末までに測定を終える。静磁場による溶融金属の対流抑制効果と過冷却液体の凝固抑制効果との関連を解明し、過冷却液体金属の磁気相転移の可能性を追究する。得られた成果を論文として発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では本学共用のSQUID磁気測定装置を使用しながら、強磁性低融点合金を開発してきた。しかしながら、ヘリウムの国際的な供給不足のために液体ヘリウムを入手できなかった。さらにSQUID磁気測定装置が故障したので磁気測定装置の使用が困難になった。新共用装置の稼働は6月の予定である。特にGd-Hg系合金は酸化しやすく、評価なくして合金改良の方針を立てることは意味がない。本研究で確立した作製方法によって後日に作製し、磁気測定等に供する方が合理的である。以上の理由により計画を変更したため、未使用額が生じた。 金属原料等の消耗品、磁気測定装置のランニングコスト(液体ヘリウム、超伝導磁石メンテナンス)、科研費研究員雇用、学会旅費に使用する。
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