2012 Fiscal Year Research-status Report
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24656017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
長屋 智之 大分大学, 工学部, 教授 (00228058)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 液晶電気対流 / パターン形成 |
Research Abstract |
負の誘電異方性を持つ液晶に電場を印加すると,ある閾値以上の電圧で対流が発生する。液晶電気対流は非平衡系においてエネルギーの流入,流出,内部での散逸が存在するときに出現する散逸構造であり基礎科学および基礎工学の重要な研究対象である。本研究では,光導電体を用いて局所的な液晶電気対流を発生させ,対流の流れの一部を対流域の外部に取り出す方 法を確立することと,局所的な対流のリミットサイクル振動の外場同期制御および複数の局所対流間の 同期機構解明を目指すことを目的としている。 今年度最も重点的に行ったことは,光導電体を使った液晶セル作成技術の確立であった。目的とする実験に最適な光導電体を文献で探し,BSO結晶を用いることにした。そして,高品質なBSO結晶の提供先を探し,リトアニアの企業から購入した。光導電体に高周波スパッタを用いて透明電極を形成する必要があるため,印加電圧,時間等の条件を変えて適切な厚さの透明電極膜を形成する条件を探した。透明電極の作成には成功したが,透明電極膜が均一で無いことが分かり,この問題を解決する必要が生じた。なお,このセル作成に関しては,組み立て時に用いる紫外線硬化型接着剤の選定,露光器の作成,露光用治具の作成を行った。 光導電体セル作成の他,光ピンセットを使った液晶対流の流れの速さ,強さ測定を試みた。液晶に直径が数ミクロンのポリスチレンラテックス球を混入し,液晶電気対流を発生させてポリスチレンラテックス球の運動をカメラで記録した。流れの速さに付いては画像解析で求めることができたが,光ピンセットによる捕捉はまだ出来ていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
光導電体膜に不均一があり,これを解決する必要が生じたため,やや遅れていると評価した。光ピンセットでの捕捉も課題であるが,これがたとえ出来なくても本研究の目的達成にはそれほど影響は及ばない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で最も重要なことは,高品質な光導電体液晶セルを作成する事である。現時点での問題は,透明電極膜が不均一になってしまうことである。そこで,均一な透明電極膜を作成できるように,現有のスパッタ装置の資料台に回転機構を導入する。 上記の問題を解決した後,導電体に任意のパターンを照射する実験システムを構築する。顕微鏡下の液晶セルの光導電体に任意のパターンを照射するために,青色の連続発信レーザーを液晶空間光変調器で変調して偏光顕微鏡に入れる 。液晶空間光変調器をコンピュータで制御し,通過する光の位相を変調する。顕微鏡画像の解析では,フリーソフトの ImageJ に独自で開発したプラグインを用いるので,液晶空間光変調器の制御も同じ ImageJ で行う。液晶空間光変調器に表示するのは,映し出したいパターンのホログラムである ので,そのホログラムを計算するプログラムを作成する。 高品質な光導電体液晶セルが作成できるようになったら,液晶の流れ制御,局所的な液晶電気対流の振動の同期実験を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
光導電体は外国の企業から取り寄せたため,予定していた金額に若干の余りが生じた。この残金は,高周波スッパッタ装置に回転機構を導入するための部品や光学部品を購入費用に充てる予定である。
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