2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656019
|
Research Institution | Aichi Institute of Technology |
Principal Investigator |
澤木 宣彦 愛知工業大学, 工学部, 教授 (70023330)
|
Keywords | 太陽電池 / 窒化物半導体 / 電界効果 / ヘテロ構造 / pn接合 / 分極電荷 / 黄色帯発光 / 結晶欠陥 |
Research Abstract |
窒化物半導体の光学特性は太陽光の全スペクトルをカバーするため高効率太陽電池への貢献が期待されるが、現状では結晶欠陥密度が高く理論予測にはほど遠い結果しか得られていない。本研究では、窒化物半導体pn接合構造に傾斜組成層を作り付け、よって誘起される内部電界を用いる単一接合高効率太陽電池実現の可能性を明らかにすることを目的としている。本年度は試作したデバイスの特性評価を行い課題を抽出すると共に、結晶欠陥の低減のため、エピタキシャル層の欠陥による発光特性を詳細に評価した。 試料としてC面サファイア基板上にAlGaNならびにInGaN傾斜組成を有する単一pn接合を作製し、そのダイオード特性を評価した。その結果、pn接合としているにもかかわらず、順逆特性の差が小さいダイオードとなった。その原因としては結晶欠陥の導入と内部分極効果によるオートドーピングの可能性が考えられた。 傾斜組成層には、窒化物材料に特有な分極効果があり、C面上にバンドギャップを大きくしながら成長させる場合にはマイナス電荷が誘起されると予想された。試料では1ミクロン程度の厚さの範囲で組成を30パーセント程度まで増加させているため、p形ドーピングをしているにもかかわらず分極電荷により電子が誘起されたためと考えられた。 太陽電池の高効率化には結晶欠陥の低減が不可欠であるが、そのためのエピタキシャル成長条件と欠陥に基づく黄色帯発光との関係を精査した。その結果、サファイア基板、シリコン基板を問わず、バッファ層の最適化により極めて黄色帯発光の弱い(室温でバンド端発光の2~3桁)試料が得られることが分かった。その結果、従来不明であった黄色帯発光に寄与する深い準位のエネルギーを正確に決定することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き測定システムを構築し、市販のシリコン太陽電池ならびに窒化物発光ダイオードを使ってシステムの評価を行った。太陽光の全スペクトル領域で光特性が評価できることを確認した。 傾斜組成層を有する実デバイスを試作しその特性を評価したところ、デバイスの整流性、すなわちpn接合としての特徴が弱いことが分かった。試料は+C面上に作製するpn接合に於いて、p型層を傾斜組成層として作製したため、ここに内部分極効果が強く現れ、分極効果によるn形オートドーピングが発生したものと予想された。このことは当初計画では想定していなかったが、p形ドーピングをさらに強くする、あるいは+c面以外の面を利用することにより回避できると考えている。 エピタキシャル膜の高品質化については、光特性の内、キャリア寿命特性を阻害すると考えられる深い準位による黄色帯発光の起源を特定するため、バッファ層作製条件の異なる試料の中から、特に黄色帯発光の弱い試料を見いだすことができた。その結果、バッファ層の最適化により黄色帯発光を桁違いに少なくすることができることが分かった。さらに、これは結晶欠陥密度が低いことの現れと考えられるが、欠陥密度の低い高品質試料のスペクトルでは室温でも微細構造が見えることを見いだし、これまで未詳であった深い準位のエネルギーを決定することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、傾斜組成層を用いるデバイスで、大きな電界効果を得るためには、キャリア寿命増強のためのエピタキシャル層の低欠陥化と、pn接合構造の特性を阻害する内部分極効果に伴うオートドーピング効果の抑制(克服)が必要であることが明らかになった。 格子欠陥の抑制については、バッファ層の最適化により深い準位の存在を表す黄色帯発光強度を大きく低減できることが分かったが、そのエネルギー値から、深い準位の起源がGa空孔と酸素との複合欠陥であることがほぼ確実となった。酸素の導入は結晶成長温度を高くすることによりさらに低減できると思われ、このことをさらに検討したい。 傾斜組成エピタキシャル層における内部分極効果は六方晶においては避けることができないため、この効果の抑制策を講ずる必要がある。次年度は、内部分極によるオートドーピングを定量的に評価し、p形ドーピングによって解消することができるかどうかの検討を進めるとともに、+C面以外でのダイオード作製の可能性を検討する。p形ドーピングでは、既存のMgに加えて、半極性面では高濃度ドーピングの可能性が指摘されている炭素ドーピングを精査する。 本研究では、単一接合構造での高効率化を目指すことから、最終的には内部電界によるアバランシェ効果の並立を期待している。窒化物半導体のアバランシェ効果の報告はほとんど無いため、外部電界による電流増倍率を測定し、アバランシェ効果の可能性を評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、米国サンフランシスコ市で開催されるSPIE-OPTOで研究成果の発表を予定していたが、中国成都で開催の国際ワークショップで招待講演を依頼されたため、ここで成果を発表した。このため旅費に差額が生じた。 前年繰り越しの58千円と次年度配分予定の900千円を合わせ、958千円を使用する。試料作製には半導体基板(サファイヤ、シリコン)ならびに金属材料が必要である。試料の光学的特性評価は、本学に設置の顕微PLならびに顕微FTIR装置を供用するが、その運用費と消耗品費が必要である。 成果は、2015年春名古屋地域で開催予定の国際シンポジウムISPlasma2015で報告すると共に、2014年7月にスイスで開催される有機金属気相成長国際会議で報告する予定である。このための渡航費と参加費等を予定している。
|
Research Products
(9 results)
-
[Journal Article] Growth of GaN on Metallic Compound Graphite Substrate Using Hydride Vapor Phase Epitaxy2013
Author(s)
J.Y.Kim, G.S.Lee, S.G.Jung, M.A.Park, M.J.Shin, S.N.Yi, M.Yang, H.S.Ahn, Y.M.Yu, S.W.Kim, H.S.Lee, H.S.Kang, H.S.Jeon, and N.Sawaki
-
Journal Title
Jpn. J. Appl. Phys.
Volume: 52
Pages: 11NG03(4pp)
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-