2012 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッド型液晶性無機ナノ粒子を用いた新規な複合系ER流体の開発
Project/Area Number |
24656020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
花崎 知則 立命館大学, 生命科学部, 教授 (80278217)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 液晶 / ER効果 / 無機ナノ粒子 / ハイブリッド |
Research Abstract |
表面修飾無機ナノ粒子と低分子液晶との混合系におけるER効果について検討した.その際,無機ナノ粒子には金ナノ粒子を,導入する液晶基にはシアノビフェニル誘導体(以下SH-10OCBと略記する)を,低分子液晶には4-シアノ-4'-ペンチルビフェニル (以下5CBと略記する)を用いた. SH-10OCBおよびデカンチオールを導入した表面修飾金ナノ粒子(以下GNP-DT-10OCBと略記する)を合成し,5CBとの相溶性を検討した結果,デカンチオールのみを被覆した金ナノ粒子は5CBとの相溶性が悪く,SH-10OCBの導入率の増加により相溶性が向上した.さらに,GNP-DT-10OCB(50%)ならびにヘキサンチオールを導入したGNP-HT-10OCBでは,等方相およびネマチック相において,5CBと高い相溶性を示した.表面修飾金ナノ粒子と5CBとの混合試料において,等方相-ネマチック相転移の際の組織変化は5CBとは異なったが,透明点および相の変化は確認されなかった. 表面修飾金ナノ粒子と5CBとの混合試料のER効果には,表面修飾金ナノ粒子の凝集が影響することが明らかとなった.具体的には,相溶性の悪い表面修飾金ナノ粒子との混合系は,電場印加下において5CBには認められ擬塑性流動を示した.一方,相溶性の高い表面修飾金ナノ粒子は,濃度の増加に従って基底粘度の増加した.また,GNP-HT-10OCBは5CBとの相溶性が高く,その流動曲線は擬塑性流動を示した.偏光顕微鏡観察の結果より,表面修飾金ナノ粒子の凝集による構造形成によってせん断応力の増加が生じたものと推察される. 以上に示したように,表面修飾金ナノ粒子にメソゲン基を導入することでホスト液晶への相容性を高めることに成功し,さらに,無電場時においてニュートン流動,電場印加時において分散系ER流体に認められるような擬性流動の発現を確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回,金ナノ粒子に導入したシアノビフェニル誘導体(SH-10OCB)は,シアノビフェニル末端にメチレン鎖を導入し,これを金ナノ粒子と結合させたSide-endタイプの表面修飾基である.しかし,当初計画では平成24年度中にSide-onタイプの表面修飾基の合成も行い,これを導入した表面修飾金ナノ粒子のER効果に与える影響についても検討する予定であった.また,金ナノ粒子を用いた研究と並行してシリカナノ粒子を用いた検討も行う予定であったが,この点についても現時点では未達成となっている. これは研究の効率的な遂行のため,Side-endタイプの表面修飾基を導入した金ナノ粒子に焦点を絞り,当初予定では平成25年度および26年度に予定していた検討事項も先行して平成24年度に行うこととしたためである.本研究で設計したSide-onタイプの表面修飾基の合成は10ステップ以上の合成段階が必要である.すでに合成手法は確立したが,ER効果等の測定実験に必要な量の表面修飾金ナノ粒子の合成に必要な量を得るためには大量合成の必要があり,これに多大な時間を要することから,Side-onタイプの表面修飾基を用いた研究を優先的に行うこととした.シリカナノ粒子を用いた系についても同様である. 先行して行った研究成果を考慮すれば,トータルとしては概ね順調なペースで実施できているが,平成24年度に実施予定であったものの一部が未達成のため,「やや遅れている」との自己評価とした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の計画において現時点で未達成となっているSide-onタイプの表面修飾基の大量合成を行い,これとアルカンチオールとを導入した金ナノ粒子を種々合成する.得られた試料を用い,5CBとの混合試料を作成し,その相溶性を検討するとともにER効果の測定を行う.並行して,シリカナノ粒子に導入する表面修飾基の合成経路の確立を行う. 上述の通り,研究の効率的な遂行という立場から当初計画とは異なる順序での実施となっているが,個々の研究については当初計画の順序で遂行する予定である.すなわち,無機ナノ粒子に導入する液晶基としてSide-endタイプならびにSide-onタイプの液晶基を合成し,これを単独ならびに非液晶基との混合状態で導入した表面修飾無機ナノ粒子を合成する.得られた化合物の相転移挙動をはじめとした種々の物性を明らかにする.その後,これらを低分子液晶と混合した複合系について,相溶性,液晶挙動,ER効果などについて検討する.平成25年度は特にSide-onタイプの液晶基を金ナノ粒子に導入した系について重点的に行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述の通り,平成25年度は特にSide-onタイプの液晶基を金ナノ粒子に導入した系について重点的に行う予定であり,研究経費のうち消耗品費はこれらの化合物の合成に必要な試薬の購入ならびにER効果などの物性測定に必要な測定用治具などの購入に用いる.また,旅費は平成24年度の研究成果を国内外の関連学会において発表するために用いる. なお,平成24年度の経費執行のうち,物品費については,ほぼ計画通りであったが,旅費および人件費・謝金については研究の進捗状況の関係から使用しなかった.本未使用分は,平成25年度に参加予定の国際会議ならびに国内会議への出張費の一部として,またその残額は物品費として有効に活用する予定である.
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