2013 Fiscal Year Annual Research Report
動作環境における有機デバイス電子状態の「その場」観測
Project/Area Number |
24656022
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
山根 宏之 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 助教 (50402459)
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Keywords | 有機エレクトロニクス / 電子状態 / 軟X線発光分光法 |
Research Abstract |
機能性物質やそのデバイスの多くは、電場・磁場などの外部摂動を受けることでその物質固有の物性が発現する。このような物性が発現している「その場」におけるフェルミエネルギー近傍の電子状態は基礎的にも応用的にも重要な知見だが、一般的な光電子分光法などでは原理的に計測が困難である。この問題を解決するため、本研究では軟X線発光分光法(XES)を応用した研究を行う。XESは内殻励起の中和過程で放出される発光軟X線を計測するバルク敏感な手法なので、電極の存在や電場・磁場の影響を受けずに電子状態評価が可能である。この特徴を利用して、動作環境におけるトランジスタや太陽電池などの有機デバイスのフェルミエネルギー近傍の電子状態を「その場」観測できる方法論を確立する。 平成25年度は、昨年度に引き続き、有機デバイス動作環境下の電子状態計測が可能なXES測定システムを開発した。特に有機トランジスタのような試料に電圧を印加する測定システムの開発を行った。分光器周りの深刻なトラブルにより、本申請課題の研究期間内に十分な実験データを取得することが出来なかったが、引き続き研究を進めることで当初の目的を達成させる予定である。 研究期間全体を通じては、上述の装置開発を行う一方で、有機超伝導が発見されたポタジウムドープピセンのフェルミ準位近傍の局所価電子状態をXES測定によって観測した。この結果から、ポタジウムドープピセンの超伝導発現機構には炭素とポタジウムの混成軌道が重要な役割を担っていることを明らかにした。 本研究課題で目的としている「物性発現を担う電子状態」の観測が出来た一例と考えている。
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Research Products
(1 results)