2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24656023
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
森山 悟士 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, MANA独立研究者 (00415324)
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Keywords | グラフェン / 量子ドット / ディラック電子系 |
Research Abstract |
本研究では, 新しいグラフェン量子ナノ構造と磁場の制御を駆使することによって, ディラック電子系を保持したまま電子を微小構造に閉じ込め, 電子輸送を制御する「単一ディラック粒子制御素子」を開発することを目指す。 最終年度である本年は, 前年度において実施したデバイス構造の改良および作製プロセスの開発をもとに, グラフェンナノ構造素子の電子輸送, さらに基板から独立した架橋型グラフェンナノ構造素子の電子輸送の評価を実施した。基板から独立していないグラフェンナノ構造素子では, 試料に対して一様垂直に印加される磁場によってクーロンブロッケイドが生じる量子閉じ込め効果の観測に成功した。この結果は, 磁場によってディラック粒子が閉じ込められていると理論的に示唆され, 単一ディラック粒子の制御に成功したと考えられる。一方で, 荷電不純物等に起因する電子ホールパドルを介した多重ドット的な輸送現象も観測された。これはグラフェンと基板との相互作用および基板表面の平坦さに起因する幾何学的な構造の揺らぎが原因であると考えられる。実際, 原子レベルでより平坦な六方晶窒化ホウ素を基板に用いることによりグラフェンの移動度が上昇し, またグラフェンを基板から浮かした架橋構造では基板からの散乱が完全に抑制され, 理論的な限界値まで品質が上昇することが報告されている。そこで架橋されたグラフェンナノ構造素子を作製し, 極低温での電子輸送測定および電流アニールを試みた。電流アニールを数回行うことによって, 素子のゲート電圧依存性は理想的なグラフェンの特性に近づき, さらに量子揺らぎを伴う伝導現象が観測された。しかし電流アニールによる素子の最適化を図ることは, 各回ごとの電流アニールの特性変化にばらつきがあるため難しく, 今後デバイス構造とプロセスを検討する必要がある。
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