2012 Fiscal Year Research-status Report
強磁性共鳴を用いた磁気交換力顕微鏡の超高感度化・超高分解能化
Project/Area Number |
24656035
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
菅原 康弘 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40206404)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 磁気交換力顕微鏡 / 交換力 / スピン / 磁気モーメント / 原子間力顕微鏡 |
Research Abstract |
個々の原子によって構築されたナノ構造体の磁気的性質を理解するために最も重要なものは、原子の磁気モーメント(スピン)間の磁気交換相互作用であり、これを直接測定できる革新的な手法として、磁気交換力顕微鏡が注目されている。本研究は、強磁性共鳴を用いて、物質表面に作用する交換力を原子分解能で観察できる磁気交換力顕微鏡を開発することを課題として提案する。また特に重要な研究目標として、『磁気交換力顕微鏡を超高感度化・超高分解能化する技術の開発を行う』。今年度の主な成果は下記となっている。 1.先鋭で清浄な磁性体探針の実現 交換力を高分解能に検出するためには、先鋭で清浄な磁性体探針を実現する必要がある。そこで、現有の超高真空原子間力顕微鏡に装備しているArスパッタ銃を用いて、シリコン探針に磁性体を先鋭にコートできるようにした。 2.マイクロ波を探針先端に効率的に照射する機構の構築 現有の超高真空・非接触原子間力顕微鏡にXYステージと直線導入機とからなる3軸移動機構を取り付け、探針アンテナを磁性体探針の極近傍に接近できるようにした。 3.磁性体探針の強磁性共鳴条件の解明 強磁性共鳴を利用して探針の磁化状態を変調するためには、照射するマイクロ波の周波数を強磁性共鳴が生じさせる周波数に設定する必要がある。そこで、磁性体探針によるマイクロ波吸収の周波数特性を測定し、磁性体探針の強磁性共鳴の条件を明らかにした。 4.交換力を高感度に測定するための変位検出計の低ノイズ化 現有のカンチレバーの変位検出計のノイズは、半導体レーザのモードホップノイズが大きな原因となっている。そこで、半導体レーザを高周波変調しモードホップノイズを低減し、変位検出計の低ノイズ化を実現した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、次の4つの具体的な課題(1.先鋭で清浄な磁性体探針の実現、2.マイクロ波を探針先端に効率的に照射する機構の構築、3.磁性体探針の強磁性共鳴条件の解明、4.交換力を高感度に測定するための変位検出計の低ノイズ化)を取り上げ、それぞれについて研究を推進した。その結果、すべての課題に対して、予定通りの成果が得られており、順調に研究が進展している。以上のような理由により、研究目的の達成度としては、おおむね順調に進展しているとした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の課題について研究を推進する予定である。 1.強磁性共鳴を用いて磁性体探針を磁気変調できることを実証 磁性体カンチレバーを磁場中に設置し、それに振幅変調されたマイクロ波を照射し、探針の磁化状態を強磁性共鳴により変調できることを実証する。具体的には、カンチレバーの周波数シフトに現れる変調成分をロックインアンプで検出することにより、磁気変調できることを実証する。なお、漏洩磁場の大きな試料として、パーマロイ合金薄膜を用いる。 2.交換力の最適な観察条件の検討 交換力を最も高感度に測定するための観察条件を実験的に解明する。具体的には、測定された周波数シフト曲線(周波数シフトの距離依存性)より、様々なばね定数、機械的共振周波数、振動振幅に対する周波数シフト曲線を理論的に導出する。この周波数シフト曲線に対する信号対雑音比を求め、最も感度の良くなる条件を明らかにする。 3.原子分解能で交換力を測定できる磁気交換力顕微鏡の実証 反強磁性体のイオン結晶である酸化ニッケル(NiO)の(001)表面は、隣接原子のスピンが反平行に配列する。 このNiO(001)表面を試料表面として取り上げ、表面の個々の原子の結晶構造と交換力(スピン配列)を原子分解能で分離観察できることを実証する。なお、この観察には原子レベルで清浄で平坦なNiO(001)表面を用いる必要があるが、バルクの酸化ニッケルを超高真空中でへき開することにより準備する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|