2013 Fiscal Year Research-status Report
有機半導体薄膜の電子状態マッピングと時空間キャリアダイナミクス
Project/Area Number |
24656036
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山田 剛司 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (90432468)
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Keywords | 2光子光電子分光 / 時間分解分光 / 有機薄膜 / キャリアダイナミクス / ルブレン / 有機半導体 |
Research Abstract |
本年度は時間分解2PPE分光に重点を置いて実験を行った。計測試料としては有機半導体として単結晶で高いキャリア移動度が報告されているルブレン分子を用い、高配向性熱分解グラファイト基板上に蒸着したものを使用した。時間分解2PPEにおいては、使用するチタンサファイヤレーザーのパルス幅を60フェムト秒程度に圧縮して評価を行った。プリズム対を用いたパルス圧縮により、第3高調波に波長変換した時でも100フェムト秒程度のパルス幅を保持している。これは、界面でおこるキャリアのダイナミクスを追跡するのに十分に短いパルス幅であると考えている。 この試料を用いて、時間分解2PPEを行ったところ、基板/分子界面(吸着分子層第1層目)と膜厚数nm程度の超薄膜においては、LUMOに励起されたキャリアの寿命が100フェムト秒程度から数ピコ秒まで、大幅に増加することが判明した。分子層では数層(1nm以下)の違いしかないものの、基板がキャリア消滅までに果たす役割の大きさが実験的に示された。 偏光依存2PPEの結果では、膜厚によってルブレンのペンタセン骨格の配向が直立していく傾向が示唆された。STMを用いた構造解析でも単層膜と厚膜で顕著な構造の差が見られているため、今後両者の関連の対応付けを検討する。特に、多層膜では2量体が観測されており、ダイマー形成がキャリア寿命の長短にどれだけ影響するのか興味深い。 本研究では電子状態のみならず構造情報も同時に取得しているので、構造と電子状態に関して、1対1での対応付けが可能となったといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開始2年度目となった本年度は、時間分解分光への展開を行った。今年度は特定の有機薄膜(ルブレン)においてこの手法を応用し、膜厚・偏光依存2PPEから構造に依存したキャリアダイナミクスについて、新たな知見を得ることができた。本研究では基板と材料を系統的に変化させつつ、電子状態の時間変化計測と空間マッピングを行うところまでを最終目的としているが、現段階では基板・材料を系統的に変化させるところまでは到達できていない。 これが可能となれば、有機デバイスの新規材料発の際に役立つ設計指針が得られることが期待できるため、次年度での実施を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
実験手法としては確立できたものと考えているため、今後は基板と有機半導体試料を変化させて実験を行うことを試みる。単に基板と分子の組み合わせを考えるのみならず、2成分混成系の薄膜を使うことも検討している。電子ドナーおよび電子アクセプター分子を組み合わせた表面薄膜ではキャリアの生成や消滅にエキシトン(励起子)の関与が大きいという報告が多くなされている。これらの事実を踏まえ、適切なドナーおよびアクセプタを組み合わせて時間分解分光実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度当初は時間分解分光用のステージコントローラ(約50万円程度)を新調する予定であった。しかしながら研究室保有の在庫品を使用することができ、かつ実験を行う上での性能も十分であったのでそれを使用することとし、当該年度の所要額に購入予定相当分の残金が生じた。 次年度は系統的に基板と試料を変更させつつ実験を行う予定であり、このために使用する物品費に充当して使用する予定である。また、成果発表用の旅費にも充当する予定である。
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Research Products
(12 results)