2013 Fiscal Year Annual Research Report
金属ナノ構造を利用した中赤外電磁場の増強と時空間制御
Project/Area Number |
24656045
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
芦原 聡 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10302621)
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Keywords | 応用光学・量子光工学 / 光物性 / 量子エレクトロニクス |
Research Abstract |
【研究目的】赤外吸収分光によって観測される振動スペクトルには、分子の構造・振動状態・周囲環境が敏感に反映される。そのため、時間幅の短い中赤外超短パルスを用いることにより、そうした分子の状態と周囲環境の変化を時間分解観察できる。また、赤外光は 段階の振動励起を起こすことよって分子反応を誘導する、新しい反応制御法をもたらすと期待できる。しかし、既存の光源から得られる中赤外パルスのエネルギーが限られているため、赤外多光子遷移確率、ひいては分子ダイナミクスの検出感度や反応効率が制限され る。この問題を解決するためのアプローチとして、我々は、微小金属における表面プラズモンによる電場増強効果に着目した。本研究では、中赤外域で共鳴を起こす金属構造を設計・作製し、電場増強を実現することを目的とした。 【実績の概要】研究初年度は、電磁場解析により、中赤外波長域で局在型プラズモン共鳴を起こす金属ナノ構造を明らかにし、その金属ナノ構造を電子線リソグラフィによって作製した。そして、確かに中赤外波長域でプラズモン共鳴が起こることを、赤外消衰スペクトル測定により明らかにした。 最終年度は、これら中赤外域で共鳴する局在型プラズモンによる電場分布を、赤外近接場顕微鏡を用いて測定した。そして、中赤外光の波長以下の空間に電場が局在していること、共鳴条件では強い局所電場が存在することを明瞭に観測した。次に、局在電場の増強度を実験的に評価するため、中赤外光照射による金属自由電子のトンネルイオン化の実験を行った。トンネルイオン化レート(単位時間あたりの放出電子数)の励起光強度依存性から、局在電場の強度が千倍程度に増強されているという結果を得た。 以上の通り、本研究を通して、中赤外域で局在型プラズモン共鳴を示す金属構造を設計・作製し、その共鳴励起による顕著な電場増強と増強電場のナノ空間分布を実験的に示すことができた。
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Research Products
(10 results)