2012 Fiscal Year Research-status Report
半導体多層膜結合共振器構造による二波長レーザ発振とテラヘルツ波発生の研究
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24656051
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
井須 俊郎 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 特任教授 (00379546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 健 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 特任講師 (30448344)
北田 貴弘 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 特任准教授 (90283738)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 半導体レーザ / 面発光 / 化合物半導体多層膜 / MBE,エピタキシャル成長 / 量子ドット / 二波長発光 / 結合共振器構造 / ウエハ接合 |
Research Abstract |
本研究では簡便なテラヘルツ波発生素子に向けて、差周波発生可能な半導体多層膜結合共振器構造による二波長面発光のレーザ発振を実現することを目的とし、広帯域の利得スペクトル幅をもつレーサ活性層、非線形分極の制御が行える結合共振器構造、および電流注入による二波長発光の制御の三つの要素技術に関する研究を実施している。 平成24年度は広帯域の利得スペクトル幅を持つレーサ活性層の実現のために、InAs量子ドットに着目し、GaAs(100)基板上において1.3μm近傍で発光する高品質な量子井戸中InAs量子ドットを得た。その量子井戸中量子ドットを共振器層に含んだ結合共振器構造を分子線エピタキシーにより作製し、光励起により室温での二波長レーザ発振を確認した。 非線形分極の制御については、二つの共振器層の二次非線形分極が互いに相殺しないようにするため、二次非線形性を有するGaAs(113)B基板上に作製した多層膜構造と、GaAs(100)基板上に作製した二次非線形性を有しない多層膜共振器構造を、貼り合せることにより結合共振器構造を作製することを試みた。GaAs(100)基板上の共振器構造には利得媒質となる量子井戸中InAs量子ドットを含む構造を作製し、GaAs(113)B基板上の多層膜構造とを、ウエハ接合法により貼り合せを行い、結合共振器構造ができることを確認した。 電流注入による発光制御に向けて、まずp型およびn型のGaAs層の作製のためのドーピングの基本条件を確認し、上記のGaAs(100)基板上の量子井戸中InAs量子ドットを活性層としたストライプ型レーザを試作した。その結果として、電流注入によるレーザ構造の作製の基本プロセス技術としてのPN接合作製と電極形成技術の構築をするとともに、この量子井戸中InAs量子ドットがレーザ発振可能な十分な利得がある活性層材料となりうることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標とする二波長面発光レーザに向けて、幅広い利得スペクトルを持つ活性層媒質を量子井戸中InAs量子ドットによって実現できることを確認し、また結合共振器構造によって二波長発振が可能なことを光励起による室温レーザ発振によって検証することができた。さらに、ウエハ接合による結合共振器構造の作製が可能なことを確認するとともに、PN接合を持つ多層膜の結晶成長、およびと電極形成技術を確立し、電流注入による面発光レーザの実現のための技術基盤を整備できた。以上の成果は当初計画を順調に達成したものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に引き続き広帯域利得スペクトルをもつレーサ活性層の高品質化、結合共振器構造の非線形分極の制御、二波長発光の制御に関して研究を推進する。 広帯域利得スペクトル幅のレーサ活性層の高品質化においては、GaAs(001)基板上においてより利得の高いInAs量子ドットの作製条件の探求を行うとともに、GaAs(113)基板上での量子ドットの高利得化を目指して作製条件を探求する。 結合共振器構造の非線形分極制御としては、GaAs(001)基板上多層膜共振器構造とGaAs(113)B基板上多層膜共振器構造のウエハ接合プロセスによる結合共振器構造の作製を引き続き行い、デバイス構造作製のプロセスの改善を図る。さらにまた、共振器層の非線形感受率の向上のための材料として、歪緩和バリア層に埋め込んだInAs量子ドットについて検討し、その特性の評価と結合共振器構造作製を行う。 電流注入による二波長発光の制御については、まずGaAs(100)基板上で単一共振器による面発光レーザを作製し、プロセス技術の確認をおこなう。次に、GaAs(100)基板上の活性層を含む多層膜構造と、GaAs(113)B基板上の非線形媒質を有する多層膜とのウエハ融着により結合共振器構造を作製する。GaAs(113)B基板上での量子ドットで十分な利得が得られた場合はGaAs(113)B基板上の多層膜同士でのウエハ貼り合せによる結合共振器構造を作製する。これらの結合共振器構造試料に電流狭窄構造や電極構造を加工し電流注入型面発光レーザを試作する。試作した素子の電気的特性を計測するとともに、発光特性の評価を行い、二波長でのレーザ発振動作を確認するとともに、発振モードの制御のための素子構造の適正化を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は8034円であり、そのうち内8000円は3月に行われた学会の学会参加であるが、事務手続きの関係上4月支払として処理されているため次年度使用額欄に計上されているものである。経費は主に物品費として使用したが、計画額との差額が生じたものである。これはH25年度物品費1,100,000円と合算して使用する計画である。H25年度物品費の使用計画としては、主に試料作製のための原材料、寒剤、プロセス材料の購入、ならびに、測定系構築にかかる部品、特性測定のための治具、消耗品の購入に充てる。物品費以外には学会参加のための旅費、学会参加費としてその他経費を計画している。
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