2012 Fiscal Year Research-status Report
レーザ直描テーラーメードクラッド形状を有した導波路型可視域レーザ
Project/Area Number |
24656055
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
神成 文彦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40204804)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | レーザー描画導波路 / 導波路レーザー / 可視域レーザー / フェムト秒レーザー加工 / 時空間集光 |
Research Abstract |
ガラス内部の微小空間にフェムト秒レーザーパルスを集光することで永続的な屈折率変化を誘起できることは確立された知見である。我々は,現有のフェムト秒レーザー装置を用い,この屈折率変化を誘起する追試実験を行った。本研究では,誘起屈折率分布を光導波路形成に用いるが,通常のレンズを用いて繰り返し周波数1 kHzのフェムト秒レーザーを集光しても円形の屈折率変化は書き込めないことを確かめた。そこで,回折格子によって周波数成分を角度分散させ,集光点で再び周波数成分を重畳して短パルス化することができる時空間レンズ光学系を構築した。この光学系によって明らかに誘起屈折率分布形状が改善できることを確かめた。また,回折光学系を用いて理論的にも確かめた。 導波路ガラス試料は,Pr3+ドープZBLANガラスを用意し,光学研磨した。このガラスは,フェムト秒レーザーを集光することで屈折率が低下することが知られており,誘起屈折率変化を起こした部分をクラッドとして用いる本研究の目的に合う。 フェムト秒レーザーを集光し,導波路の断面に花びら状に誘起屈折率分布を配列し,長手方向に数mmの描画を行えるよう,直線ステージを構築し制御系の動作を確認した。システマチックに導波路を書く行程において,屈折率変化の書き込みをリアルタイムで観察する必要があると判断し,その観測系の調査と構築を行った。 本ガラス導波路レーザーは,青色半導体レーザー励起可視波長可変Pr3+レーザーとして動作させることを最終目的にしている。そこで,Pr3+レーザーの要素技術を完備するため,青色半導体レーザー励起Pr:YLFレーザーのレーザー実験も並行して行った。Cr4+:YAGが可視域で過飽和吸収体として動作することをはじめて見いだし,受動Qスイッチおよび受動Qスイッチ・モード同期動作を実現した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フェムト秒レーザーでガラス中に側面から描画する場合,通常の集光ではなく,時間レンズ集光系を用いることで屈折率変化断面形状がレーザー共振器用導波路形成に適していることを確認した。これは本研究で提案する新しい手法であり,これを確認した上で,導波路書き込み用の自動走査型ステージを設計し構築が終了した。また,Pr:ZBLANガラス材料も入手でき,屈折率変化を直線状に形成できるまでは確認できた。現在,HeNeレーザで導波路伝播を確認するまでには至っているが,クラッド描画によるコア閉じ込め特性の測定には至っていない。 システマティックに描画する段において,当初は不要と思われてたリアルタイムでの誘起屈折率分布のイメージングがプロセスを評価するために必要と気づき,この観察系のデザインと構築に予想していなかった時間が必要となった。 当初は24年度中に導波路型Pr:ZBLANガラスレーザーの発振までを予定していたので,やや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
Pr:ZBLANガラスへの導波路的な長い屈折率変化を自動的に描画するセットアップはでき上がっているので,クラッド描画によってコアで効率よく導光するための最適な屈折率変化,クラッド形状を決定する。Pr3+レーザーの発振波長である波長633nmに対応するHeNeレーザーをプローブにし,導光特性を測定する。Pr:ZBLANは長さ5cm程度で十分なレーザー利得長を達成するので,励起用青色レーザーの導波特性も計測し,レーザー発振に必要なコアサイズを決定する。この時,青色レーザーのビームパターンに整合するコア形状がレーザー発振に適すかどうかを調査する。レーザー共振器は,導波路を書き込んだ後に端面に誘電体多層膜を形成することで構築する。 平面導波路構造のメリットは導波路構造をデザインできる点であり,横方向に10程度のアレイが等間隔で並んだマルチ導波路を形成する。かつ,出口部には単一の1次元導波路を構築することでアレイレーザーの回折・干渉を許容してTalbotセルフイメージング効果を誘起させる。本手法によりコヒーレント結合が可能となる。コヒーレントに結合したレーザーを共振器内で集光させ,そこに過飽和吸収体を配置して受動Qスイッチコヒーレントアレイを実現するのが最終目的になる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
フェムト秒レーザーを照射しながらガラス内部のサブミリ空間における屈折率変化が観測できる位相顕微計測系を構築する。そのための光学系として主として消耗品支出を行う。 Prドープガラスの光学研磨代および共振器用誘電体鏡蒸着代を支出する。また,Pr:YLFレーザーの成果を国際会議で発表するために海外出張費を支出する。
|