2012 Fiscal Year Research-status Report
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24656057
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
倉辻 比呂志 立命館大学, 理工学部, 教授 (30178090)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 非線形複屈折 / 偏光 / ゲージ場 / 非線形シュレディンガー方程式 / カイラル構造 / カー効果 |
Research Abstract |
当初の計画にしたがって、まず非線形複屈折媒質中での非線形シュレディンガーの形式を確認した。すなわち、z に関して1階かつ, z 方向に垂直な方向 (x, y) 変数に関しては, 2次元ラプラシアンで記述される。ポテンシャルは、非線形カー効果によって与えられるが、2成分を適切に案配するところに注意を要する。この定式化における要点は、以下のところにある。2成分波動関数を円偏光表示を用いること。これは、通常やられている直線偏光基底とは決定的に異なる優位性をもっている。円偏光基底の有効性を顕示するもっとも典型的な例は、「光学活性」効果をもっとも自然に取り入れることができるところにある。これにより、非線形複屈折効果がもっとも自然かつ容易に取り扱うことができる。この基本方程式は、自明なゲージ不変性を有している。ゲージ不変性を局所化する(つまり、位相に空間依存性をもたせる)ことにより、ゲージ場が導入される。現時点得られた結果として、以下のようにまとめられる: 1. 非線形シュレディンガーを1次元的にした場合:すなわち、 (x,y) 自由度に関して一様な場合にゲージ場の効果を解析し偏光伝搬の解析的記述に成功した。ゲージ場は、カイラル場として同定される。カイラル場のしたがう方程式は、1次元のヒッグス場とでも呼ばれるべきものである。 さらに、ゲージ場独自の観点にくわえて、つぎのあらたな観点が見いだされた。 2.偏光自由度量子化の観点。ゲージ構造を発現する幾何学的位相が量子ストークス変数から構成されるスピンコヒーレント状態に付随するものもとして、経路積分を通じて抽出されることが示された (現在投稿審査中)。 3. 新たに、ストークス変数の集合体に対する統計力学的理論が構成されることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画のうちの60パーセントは達成されたと自己評価している。偏光自由度は、2成分複素場で記述されるのであるが、研究遂行を行うなかで、この2成分系に内在するゲージ不変性が、物理現象の非常に普遍的な枠組みのなかで捉えられることがますます明らかになってきたことが評価の背景である。さらに,あらたな観点を見いだしたことを強調したい。
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Strategy for Future Research Activity |
本来の目的であるゲージ場と偏光の結合を第2種超伝導体との類似で解析する。 (1)マイスナー効果は磁場を排除する。この光学的類似はゲージ場としての変形場が偏光場(超伝導秩序場)によって排除されることである。これは著しい予測である。逆に、臨界磁場が超伝導を破壊することの類似として、偏光場における正常状態に相当する領域、すなわち渦が発生することが予想される。比較のために異方性がない場合に検討する。このときには、スメクチック液晶における相転移論(ランダウードジャン理論)との類似がなりたつ。この類似によって偏光自由度のある場合への洞察が得られるものと期待される。 (2)光渦の現象はすでに知られているが、偏光渦の概念はこれまでに試されたことはなく、全く新しい概念である。渦の形成は、一種のファイバー(dark soliton) の実現と考えられる。これはストークス変数に対する非線型シグマ模型の観点からみるときわめて自然に取り扱える。すなわち、Skyrmion (スカーミオン)の概念である。スカーミオンは、異方性をもつ非線形媒質において生じる特別解でトポロジカル不変量で特徴づけられるものであって、スカーミオンが非線形複屈折媒質で実現されうると期待するのは自然である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 北海道大学応用物理学教室にて情報交換を行うための旅費。 2.国際会議: Optics of Liquid Crystals, Sept.29-OCt. 4, Honolulu に出席のための旅費。 3.年度末に予定する小研究集会の経費。なお、前年度の未使用分はこの研究集会での経費へ追加使用のために留保した。
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