2012 Fiscal Year Research-status Report
パルスレーザーによる高分子ナノワイヤー生成機構の解明
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24656058
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
後藤 真宏 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (00343872)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 高分子ナノワイヤー / パルスレーザー / シャドグラフィー / 時間分解 |
Research Abstract |
パルスレーザーによる高分子ナノワイヤーの作製は、我々が発見した現象であるが、未だそのメカニズムについては解明されていない。当該研究では、その発現機構の解明をめざし、さらには、ドーピングにより性質の異なる高分子ナノワイヤーの創製を目指している。本年度は、ポンププローブ法を用いた高分子ナノワイヤー成長過程の時間分解可視化システムを構築し、高分子ナノワイヤーの直接観察を行った。既存の倒立型顕微鏡とナノ秒パルス色素レーザーからなる高分子ナノワイヤー作製システムを基盤とし、そこに、超高速度カメラ、デジタル遅延パルス発生器、ならびに、観察光学系を組み合わせて、実験装置を構築した。本システムを用いた実験により、高分子ナノワイヤーの成長過程をシャドグラフィーイメージで撮影することに成功した。また、その成長時間についての知見を得た。条件を最適化すれば約200ミクロン長レベルの高分子ナノワイヤーも作製可能であり、その場合でも3マイクロ秒程度にて、成長過程は完了することが明らかとなった。さらに、レーザー光の集光位置の変化による高分子ナノワイヤーの成長現象の影響(例えば長さなど)や成長に最適なレーザー光度についての知見を得た。レーザー光の集光位置であるが、基板側からレーザー光を照射し、高分子フィルム表層部近傍に集光することを、本実験の基準とした。その位置から、基板側に13.6ミクロン、もしくは、レーザー光進行方向に25.5ミクロンずらした位置にフォーカスをした場合に最も長い高分子ナノワイヤーが成長することがわかった。これは、レーザー光を吸収する高分子膜の体積を最小にするのではなく、最適な照射体積量が存在することが明確となった。また、高分子ナノワイヤーに2つのプローブでアプローチが可能なシステムも構築した。現在、高分子ナノワイヤーの形状測定を行うことに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の目的に設定したことは、①高分子ナノワイヤーの発現機構の解明と、②ドーピングによる機能性付与であった。そして、平成24年度に設定した研究実施計画は、そのうちの①であった。前述の研究実績の概要で述べた通り、平成24年度に設定していた実験内容は、全て達成しており、おおむね順調に進展している。②については、平成25年度に実行する計画であるが、これについても着実に準備を整えており、総合的に見ても、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、高分子膜中にナノ材料を分散させ、これらナノ材料が高分子ナノワイヤー中にどのようにドーピングされるかについて研究を行う。また、ナノ材料がドーピングされた高分子ナノワイヤーの電気特性をプローバーシステムを用いて解析する。 高分子ナノワイヤーのドーピングは、以下の手順で試みる。ドーピング高分子膜の作製は、高分子溶液に金属クラスター・微粒子を様々な濃度で分散させ、それを用いて高分子ソースフィルムを作製することで行う。その作製されたドーピング高分子膜にパルスレーザー光を照射し、ドーピングを目指す物質を含有する可能性のある高分子ナノワイヤーが成長可能かを観察する。さらに、その最適条件を探索する。次に、電子顕微鏡などの装置を用いて、ドーピングの成否を解析する。これまで、絶縁性の高分子を原料としてきたが、導電性の高分子材料を用いて、高分子ナノワイヤーの作製を試みる。プローバーシステムを用いて、ドーピング高分子ナノワイヤーの電気特性の測定を試みる。前年度と本年度に得られた結果を基礎とし、高分子ナノワイヤーの構造ならびに電気特性を分子デバイスへの応用に向けて最適化できる方法を確立する。そして、これまでに行ってきた研究を鑑み、最終的に高分子ナノワイヤーの発現メカニズムについて総 括する。また、高分子ナノワイヤー生成についてのモデルを構築・提案し、本プロジェクトを総括する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(消耗品)(全て千円) 試薬(有機分子、溶液、固体基板)350(千円)、カンチレバー 250 (国内旅費)応用物理学会 100 (その他)学会参加登録費 20、論文投稿料 80
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