2013 Fiscal Year Research-status Report
超高強度-高導電性水素化銅チタン合金線の開発と非破壊100テスラ磁場発生
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24656059
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鳴海 康雄 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (50360615)
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Keywords | 水素化銅チタン合金 / パルス強磁場 / 平角線 / 非破壊100T / 高強度 / 高導電性 |
Research Abstract |
本研究では、高強度と高導電性を兼ね備えた水素化銅チタン線を開発し、100Tの磁場発生が可能なパルス強磁場マグネットの実現を目的としている。本年度は昨年度に引き続き銅チタン線の線材化の研究を進めた。昨年度末、30φから6φへの冷間圧延の過程で素材にクラックを生じたため、加工を一時的に中断して中間焼鈍条件の検討を行った。熱処理条件を変えて、ビッカース硬さ試験、組織観察を行ったが、完全回復・再結晶化する条件を見いだすことは出来なかった。300℃で1時間程度で時効硬化が観測されたが、それほど顕著では無かったため、部分的に再結晶化が起こっている可能性も残されているが、より詳細な研究が必要である。クラックの発生が、母合金のインゴット作成時に取り残された、傷が原因である可能性を考えて、熱処理条件の検討と平行し、6φまで圧延した素線から傷の無い部位を選んで試験片を作成しさらなる冷間圧延を行ったとこと、3φまでの線引きに成功した。そこで、残りの試験辺に対しても冷間圧延を進めて、当初予定であった2mm×3mmの平角線を得た。この平角線に対して引っ張り試験や、曲げ試験を行った結果、1GPaを大きく上回る引っ張り強度が得られているものの、一方で靭性が大きく失われている事が判明した。現在、水素化処理と合わせて、歪み取りのための熱処理条件を決めるための試験を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
初年度に行った冷間圧延過程において、クラックの発生が原因となって平角線材への加工に遅れが生じていたが、25年度前半には平角線までの成形を終了した。しかしその後、未熱処理の条件で、曲げ試験や引っ張り試験、試験片を作って水素化熱処理の最適化を行っていく過程において、冷間圧延後の素線は極めて高い引っ張り強度を有しているが、靭性が大きく失われていることがわかった。この点はコイル化する際の障害となるため、再結晶化により靭性を回復させる必要がある。現在その条件出しを進めており、26年度前半には最終的な水素化銅チタン線が得られる予定である。初年度に生じた遅れに加えて、線引き後に判明した靭性低下に対する対策のため、当初計画していなかった再結晶化の熱処理条件出しに大きく時間を労したため、当初予定に対して一年ほど計画は遅れている。しかし、コイル化に必要な装置の準備は平行して進めており、試験用の線材を用いてのコイル製作を行える段階になっている。従って、高強度の水素化銅チタン線が作成出来た段階で、ギャップ無くコイル化のプロセスを進めることで、遅れを取り戻して研究を進行できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最近行った実験により、Cu-Ti合金の再結晶温度が450-500℃であることが明らかになってきた。これによれば、550~650℃程度の高温でも数10秒の短時間の熱処理であれば、析出硬化はそれほど進行せずに、回復・再結晶化による軟化が起こると期待される。26年度は、上記条件にて処理した試料を作成して、組織観察や引張試験、曲げ加工試験を実施を予定している。これに加えて水素化熱処理の条件出しも引き続き進め、年度の早い段階で長尺線に対して最終的な水素化処理を行う。その後、強度試験を行った後、絶縁被膜を施して最終的な平角線を得る。線材製作の作業と平行して、コイル化に必要なガラス繊維強化樹脂性のスペーサーなどの部品の製作を進める。9月を目処に実際にコイルを製作し、磁場発生試験までを実施する。性能比較を行うために、従来型のコイルで使われている純銅および銅銀線を使って同形状のコイルを作成し、磁場発生試験を実施する。試験の結果を考慮に入れて26年度後半から100T磁場発生に向けたコイル製作を始める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度、冷間圧延工程で生じた線材の欠損と過度の加工強化に対して、当初計画外であった原因究明と対策に要する研究を行ったため、引き続いて実施予定であった、水素中熱処理工程、絶縁被覆工程、引っ張り試験、そしてそれらに必要な治具やコイル部品の製作を実施することが出来ず、次年度使用金額が生じた。 26年度は、主に線材の開発に関わる経費として、冷間圧延工程の実施に200,000円、水素化処理工程とそれに関わる治具の製作に300,000円、引っ張り試験用治具の製作に50,000円、最適化された条件に基づいた長尺銅チタン線の製作に400,000円、またコイル製作に関わる経費として、絶縁被膜処理に200,000円、コイル材料の購入に300,000円を使用する、また9月と翌3月に開催される物理学会にて成果発表を行うために100,000円を計上し、次年度使用額と平成26年度請求額をあわせて効率的に使用する計画である。
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