2012 Fiscal Year Research-status Report
大気微量成分の衛星観測を事前評価するシステムの構築
Project/Area Number |
24656075
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
関山 剛 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (90354498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 泰宙 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (50435591)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大気科学 / OSSE / データ同化 / エアロゾル / 衛星観測 / ライダー観測 / 数理工学 / 事前評価 |
Research Abstract |
本研究では観測システムシミュレーション実験(OSSE)と呼ばれる仮想世界(=計算機の中に構築された世界)でのデータ同化実験を行うことによって、打ち上げ予定のエアロゾル観測衛星(特にJAXAが2015年に打ち上げ予定のEarthCAREが念頭)について、その観測から得られるであろう情報のインパクトを定量的に評価し、その衛星観測の有用性を事前に明らかにすることを目標としている。 本研究計画の1年目である本年度は、既有のエアロゾルデータ同化システムを改良することによってOSSEの実現環境を構築し、それを用いて既存のエアロゾル観測衛星(2006年にNASAが打ち上げたCALIPSO)のOSSEを実行した。エアロゾルのOSSEを行うにはエアロゾルの仮想観測値をまず作成する必要があるが、それには既有の全球エアロゾルシミュレーションモデルを走らせ、その結果をライダー観測シミュレータによって処理することによって入手した。また、その仮想観測値に疑似的な雲ノイズを作成して加えることによって現実的な欠測も再現した。 このCALIPSOのOSSEの結果は定量的に検証され、(1)我々のエアロゾルデータ同化システムが正常に動作しており(2)CALIPSO観測が黄砂解析に高い有用性を持っていることを示すことができた。また、OSSEは仮想世界の中で行うもののため、現実には1台しか飛んでいないCALIPSOを複数台に増やす実験も可能であり、それによってCALIPSOがもし4台以上存在していれば黄砂発生量の逆推定が劇的に精度向上することを示すことができた。 これらの研究成果は世界初のエアロゾル観測のOSSEであり、査読付き論文として公表した。この計算実験環境を活用することで来年度以降に予定しているEarthCAREのOSSEを実現できる目処がついた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3年計画の1年目である本年は、衛星搭載ライダーによるエアロゾル観測のOSSE環境を整備することが最優先課題であったが、我々がすでに開発していたデータ同化システムを活用することで短期間でOSSE環境の構築に成功した。また、画像解析の手法を用いて2つのエアロゾル分布の相似性を定量的に評価することにも成功した。この環境構築の作業自体が論文として公表されたものとしては世界初のエアロゾルのOSSEであり、先端的でオリジナルな研究といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に開発したCALIPSO(2006年にNASAが打ち上げたエアロゾルライダー観測衛星)のOSSEで使用した計算システムを利用し、EarthCARE(2015年にJAXAが打ち上げ予定のエアロゾル観測衛星)のOSSEを実施する予定である。CALIPSOのOSSEの成功によってEarthCAREのOSSEの実現可能性は大きく高まったといえる。CALIPSOとEarthCAREの大きな相違点は利用するレーザー光の波長と衛星周回軌道である。EarthCAREに搭載される予定のライダー装置に関する最新情報を入手するとともに、EarthCAREの軌道情報をJAXAから入手する必要がある。そのために本研究課題の研究代表者がJAXAと気象庁気象研究所との共同研究契約に参加し、効率よく研究を推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初より本年度(平成24年度)の予算において次年度(平成25年度)4月上旬開催の研究集会への参加経費を1件計上していた(ウィーンで開催される欧州地球科学連合大会)。その金額が「次年度使用額」として記入されている。
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