2012 Fiscal Year Research-status Report
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24656085
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
巨 陽 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60312609)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞 / テラヘルツ波 / 非侵襲計測 / 誘電率 |
Research Abstract |
本研究は、半導体素子の光伝導効果によるテラヘルツ波の発生および検出に関する研究の成果を生かして、細胞を透過したテラヘルツ波の周波数スペクトルから、細胞内物質のキャリア濃度、移動度、導電率、誘電率などを計測することにより、細胞固有の物理情報を実時間、非侵襲で特定する技術の開発を目的とした。本年度は以下の実績を得た。 (I)細胞計測用テラヘルツ波スペクトル測定システムの開発 時間領域分光法に基づくテラヘルツ電磁波の測定システムを構築した。フェムト秒パルスレーザを光伝導アンテナに照射することにより、パルス状のテラヘルツ電磁波の発生、検出を行い、電磁波の時間変化を測定し、その測定信号をフーリエ変換することによりテラヘルツ領域の電場スペクトルの振幅強度と位相の周波数成分を得た。このシステムの構成により、周波数0.1~2.5 THz帯域のテラヘルツ波スペクトルの計測を実現した。 (II)細胞の固有物理特徴の計測評価 上記で開発したテラヘルツ波スペクトル測定システムを用いて、骨髄幹細胞および力学刺激により分化された腱細胞など生細胞のテラヘルツ電磁波透過測定を行った。テラヘルツ電磁波の伝播経路に配置して試料を透過したあとの電場の時間変化を測定し、試料がないときの電場と比較することにより、テラヘルツ電磁波のスペクトルの振幅および位相変化を算出した。スペクトルの振幅および位相変化は透過した試料の光学定数に依存するため、この測定値から生細胞の複素屈折率、複素誘電率を評価し、生細胞の固有物理特徴の定量評価を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通り本年度に予定していた細胞計測用テラヘルツ波スペクトル測定システムの開発および固定された細胞の固有物理特徴の計測評価を実現した。さらに、次年度に予定している生細胞のテラヘルツ波計測も実施し、生細胞の誘電率評価に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
(III)生きた細胞の固有物理特徴の計測評価 培養液中生きたままの各種の細胞のテラヘルツ電磁波透過測定を行い、導電率、誘電率、キャリア濃度、移動度、プラズマ周波数、緩和時間といった細胞の固有物性を計測する。さらに、分子構造に応じてテラヘルツ領域で吸収スペクトルが顕著に表れることを利用して、骨髄幹細胞に化学的、電気的、力学的な刺激を与えて、細胞周期の各段階における細胞核内部の構造変化を透過測定で得られたテラヘルツ波スペクトルにより解析する。細胞固有の物理的情報を実時間、非侵襲で特定する技術を確立する。 また、研究計画を遂行するにあたり、連携研究者および研究協力者との連携をさらに強化し、伸展調節による骨髄幹細胞の増殖・分化による腱/靭帯の線維芽細胞の生成過程中における各段階での生細胞の非侵襲計測を実現する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
XYZ軸精密位置決め装置 600千円 マイクロ波部品 300千円 調査・研究旅費(国内) 100千円 成果発表旅費(国内) 100千円 成果発表旅費(外国) 300千円 消耗品として計上したXYZ軸精密位置決め装置は、レーザ光をテラヘルツ発振器および検出器に集光する位置を調整するため、レーザ光のビームを走査するものである。また、消耗品として計上したマイクロ波部品は、細胞に電気的な刺激を与えるため必要なものである。
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