2012 Fiscal Year Research-status Report
転位構造のECCI観察を利用した新しい疲労破壊解析法
Project/Area Number |
24656091
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
兼子 佳久 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40283098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VINOGRADOV・A Y 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10283102)
橋本 敏 大阪市立大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (50127122)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 疲労 / 転位 / 電子顕微鏡 / 微視的組織 / 破壊解析 |
Research Abstract |
本課題ではElectron Channelling Contrast Imaging(ECCI)法と呼ばれる新しい転位観察技術を用いて微視的構造を観察した.ECCI法はSEMを用いるため,試料表面の転位構造を広範囲観察することができる.今年度の研究で実施した内容は大きく分けて,疲労き裂周辺の転位の自己組織化に焦点を当てた単結晶銅を用いた研究と疲労破面直下の組織をFIB加工を利用して局所的に観察する研究の2つである. 銅単結晶を用いた疲労き裂周辺の転位自己組織化の研究では,4種類の異なる結晶方位を有する銅単結晶を中央切欠き試験片に加工し,疲労き裂伝ぱ試験を実施した.破断後,破面近傍の転位構造を表面からECCI法で広範囲に観察した.破面近傍のセル構造は,等軸状で方位差のあるセル(Type 1)と方位差ないセル(Type 2),一方向に伸びた方位差のあるセル(Type 3)の3つの種類のおおよそ分類することができた.1つの試料内では,上記のセル構造の形成はKI値に依存した.ΔKI値が増加するにつれて,Type 3,Type 2, Type 1が順に支配的になった.また,同一のΔKI値で比較すると,破面から遠ざかるにつれてType 1,Type 2, Type 3が順に支配的になった.共役および共面の二重すべりが期待される単結晶と臨界二重すべりが期待される単結晶のType 3セルの形状には違いが確認された. また,多結晶銅を用いて疲労き裂伝ぱ試験を行い,その破面をFIBで加工することにより破面直下の局所的な微視的構造観察を試みた.1つのFIB加工領域の幅や約10μmである.破面直下の転位構造は,隣接するセルと方位差があるセル構造と,方位差が小さいセル構造の二種類に分類できた.方位差の少ないセルを考慮しない条件で計測したセルの大きさはΔKI値の増加にともない明確に減少した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の破壊解析では,破面の形態を走査型電子顕微鏡などを用いて観察し,ストライエーションの有無などから破壊の原因を推測してきた.本課題では,破面の形態ではなく,破面直下の転位構造をFIB加工とECCI観察を利用して得ることで,破壊に至る過程を推測することを目的としている.そのような破壊の推測を行うためには,破面近傍でどのような転位の自己組織化が発生するのか,FIB加工による平面作成でもECCI観察は可能か,どのような種類の金属に適用できるのか,複雑な形状の部材でもこの手法は適用できるのかをなどを順番に明らかにしていく必要がある.今年度までの研究では,銅単結晶を使った研究において,破面近傍に形成されるセル構造のΔK値依存性,破面からの距離の依存性,および結晶法依存性を調査し,観察される微視的構造はそれらのパラメータに明確に依存することを明らかにした.また,破断後の破面を様々な条件でFIB加工を施し,FIB加工面でもECCI観察ができること,および観察される微視的組織はΔKI値に依存することを実験的に明らかにした.このような結果は,FIB加工とECCI観察とを組み合わせた新しい破壊解析法の有用性を示しており,初年度の研究は概ね順調に進んでいると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究では,引き続き破面近傍でどのような転位の自己組織化が発生するのか,および複雑な形状の部材でもこの手法は適用できるのかについて調査を進める.転位の自己組織化の調査では,特に疲労負荷条件が変化するような環境における再自己組織化に着目する.最も苛酷な負荷条件で形成された転位組織がそのまま残存すると期待されるが,一部では負荷荷重の減少によって組織の退化が発生するとの報告が有り,それらの現象を系統的に調査する.また,異なる荷重比などで疲労試験を実施し,き裂周辺の転位構造に及ぼす疲労負荷波形の影響も調査する.さらにき裂近傍の微視的組織に対してEBSD分析を実施し,結晶方位の変化の観点からも定量的に転位組織を評価することを試みる. 複雑な形状の部材での調査では,円柱,角柱,円筒,平板などの種々の形状を有する平滑材を疲労破壊させ,その破面の複数箇所に対しFIB加工を施し,破面直下の微視的構造を広い範囲にわたって調査する.転位セルの直径やセル間の方位差の変化を測定し,それらからΔKI値の分布が得られるかどうかを判断する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当無し
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Research Products
(8 results)