2012 Fiscal Year Research-status Report
金属基板表面への再帰性反射素子形成に向けた新規ビーム整形法の開発
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24656095
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
山崎 和彦 茨城大学, 工学部, 講師 (30436240)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | レーザ加工 / ビーム整形 / 短パルスレーザ |
Research Abstract |
本研究課題では、六角錐プリズムを用いた新しいビーム整形法とそれを用いた加工技術の確立に向け、下記に示す研究項目を実施した。 (1)まず「六角錐プリズムを用いたビーム整形光学系の構築」として、短パルスNd:YAGレーザ(波長1064 nm、パルス幅~60 ps)を、構築した整形光学系に導入し、レーザ光が、光学系を構成するそれぞれの光学素子の中心を通るよう光軸高さを調整した。 (2)次に「ビームプロファイルの確認および光軸調整方法の最適化」として、ビームプロファイラを用いてビーム整形光学系導入前後のビームプロファイルを観察した。導入前のビームはやや楕円形(半径比は約1.2)で、整形後のビームにもやや影響している。一方で、加工位置でのビームプロファイルを確認しながら、整形光学系を調整したところ、①プリズムのXY軸の調整で分割後のビームサイズのバランスを調整可能であること、②2枚目のレンズの傾きとプロファイラへの入射角度によって、整形後のビームプロファイルが大きく変化すること、などが得られた。このとき、整形後のビームの大きさは約300μmであった。整形後のビームプロファイルは、ビーム端部にやや強度の強いピークがあるものの、全体的に平坦な強度分布が得られている。 (3)次に「加工形状の評価及び加工条件の最適化」に向け、整形したビームをステンレス基板表面に照射した。パルスエネルギーは~4μJで約5秒間(約5,000パルス)照射したものの、基板表面の加工には至らなかった。同様のセットアップでポリカーボネイト基板に照射したところ、整形ビームに対応した加工痕が観察されたことから、単位面積当たりのビーム強度(フルエンス)が不足していると考えられる。したがってレーザ光のエネルギーの増大と、ビーム径の縮小が必要となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「ビームプロファイルの確認および光軸調整方法の最適化」については、ある程度完了したものの、大きさ約300μmの整形ビームではステンレス基板表面の加工は至らず、予定していた加工条件の最適化の項目は進行していない。このような加工ビームの単位面積当たりの強度(フルエンス)が不足している原因は、①ビーム整形光学系の一部に、透過率の劣る汎用の光学素子を使用していること、②加工位置でのビームサイズが大きいこと、などが挙げられる。 一方で、加工用レーザ装置の設備移転などもあり、実験室の環境整備が完了するまで実験装置を使用できない空白期間があったことも遅れている原因といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは単位面積当たりの強度(フルエンス)増加のための整形光学系の改良を行う。①レーザ装置の調整や環境整備などにより出力を増大させ、②ビーム径100~200μmが得られ、かつ低ロスの光学素子に交換する。 その後、(3)の「加工形状の評価及び加工条件の最適化」を進め、深さ方向の照射位置の調整しながら、最適な加工条件(レーザ波長、パルス幅、出力、照射パルス数など)を決定する。凹型三角形ピラミッドの作製と評価を行い、構造物の三角形の頂点におけるゆがみが顕著な場合には、単一ビーム照射による仕上げ加工を試みる。さらには、作製したピラミッド構造を周期的に配列し、(4)の「再帰性反射素子の光学的評価」を行い、より高い反射特性が得られる構造の周期や配列や加工条件等を再検討する。 最後に、(5)「仕上げ加工レーザおよび光学系の再検討」を加え、(6)再帰性反射素子を形成した「機能性素子の疲労強度試験」を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の一部は、まずステンレス基板の加工が可能となるよう、ビーム整形光学系の改良に使用する。研究費が不足する場合は、購入を予定していた自動ステージや電動シャッター、仕上げ加工用の高開口数の対物レンズを取り止め、現在保有している装置や光学素子で代用する。 また、作製した再帰性反射素子の材料強度試験などの評価費用や、研究調査および成果発表のための国内出張費、レーザ装置の維持・管理費などにも充てる。
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