2012 Fiscal Year Research-status Report
局在・伝搬型表面プラズモン励起ラマン計測による反応性ナノ粒子研磨プロセスの可視化
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24656104
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高谷 裕浩 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70243178)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 照剛 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00334011)
道畑 正岐 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70588855)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 局在型表面プラズモン / 伝搬型表面プラズモン / 表面増強ラマン散乱 / ナノ研磨プロセス / 表面微細構造クラスター / 反応性ナノ粒子 / 化学的相互作用 / 水酸化フラーレン |
Research Abstract |
反応性ナノ粒子と加工表面との化学的相互作用によって材料除去が進行すると,表面微細構造クラスター状に変化する.このときエバネッセント光と結合していた伝搬型表面プラズモンは,局在型表面プラズモンへ移行すると考えられる.従って,反応性ナノ粒子のラマン散乱光,伝搬型表面プラズモンおよび局在型表面プラズモンのどちらによって励起されたものであるかを識別すれば,加工過程における反応性ナノ粒子の化学的作用と表面状態の両方が同時にわかる.そこで本研究は,10の14乗倍以上に増強されたプラズモン励起ラマン散乱光計測に基づいた,CMP加工プロセスにおける反応性ナノ粒子の化学的作用の解明を目的とするものである.本研究課題では,提案する反応性ナノ粒子研磨プロセス計測原理を実証するため,水酸化フラーレンを利用した新たな銅配線層表面のCu-CMPに適用することにより,研磨プロセス可視化の可能性について検討する. 本年度は,局在・伝搬型SERS計測基本光学系の設計・試作を行い,さらにそれを用いてSERS計測を遂行し,実験装置の基本性能を検証した.まず,銅表面近傍のミクロな現象を観察するために,近接場照明により表面から70 nmの局所領域の分析に特化したラマン分光装置を構築した.検証実験として,厚さ10 nm以下の銅フタロシアニン薄膜を検出試料として用い,通常のラマン分光法と比較して20倍のラマン散乱光信号の増強が確認された.その結果,本装置は金属薄膜による電場の増強効果により,界面の微小な生成物を検出することが可能であることが示された.さらに,本提案手法の実現性を検討するため,ガラス基板表面に成膜した厚さ数10 nmの銅薄膜を加工試料に見立てて水酸化フラーレンを分散させた溶液中に浸漬した.その結果,銅表面との反応を開始する水酸化フラーレン分子による表面増強ラマンスペクトルの計測に成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フラーレンは520~430nm(2.4~2.9eV)の領域に比較的強い吸収バンドを有していることから,波長532nmの励起光を用いた共鳴ラマン効果を利用し,さらに,伝搬型SERS計測による,銅表面における水酸化フラーレン分子との反応による表面増強ラマンスペクトル計測によって,Cu-O結合を示す400 cm-1のスペクトルが得られた.スペクトル分析の結果,水酸化フラ-レンは銅表面においてCu-O-Cの結合で吸着していることを明らかにするとともに,水酸化フラーレンの銅に対する錯体形成を伴う反応プロセスが,BTA存在下においても起こりうることから,水酸化フラーレンは防腐膜を中和する親水性膜を形成することによって酸化剤・キレート剤の加工起点となる反応モデルを提案した.基本光学系を利用した伝搬型SERS計測による基礎実験から得られた,このような化学的研磨プロセスの知見は,当初計画では予想されなかった大きな展開である.しかし一方で,局在型SERS計測の有効性が未だ明らかになっていないため,平成24年度において設定した,局在・伝搬型SERS計測基本光学系の設計・試作とその検証に関する研究目標に対して,おおむね順調な進展と自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
本提案手法の有効性を詳細な実験データによって明らかにすることを目的とした平成24年度の当初の研究計画を完全に達成するため,エバネッセント光とのカップリングによる伝搬型表面プラズモン励起,および局在型表面プラズモン励起による,それぞれ独立したSERS計測を遂行し,実験装置の基本性能を検証することを目標とした基礎実験を継続的に遂行する.特に,一様な銀および金薄膜をクラスター状態に熱蒸着した石英ガラス基板を参照試料として用い,局在型SERS計測の検証を平成25年度前半の短期間で完遂する.局在・伝搬型SERS計測の基礎実験に基づき,本手法の一般性を示すことによって,本研究課題の基本目標を達成する.今後の推進方策として,特に研究計画の大きな変更は必要としないため,ほぼ当初の実験方針に沿った研究を遂行し,新たな成果をまとめた研究発表等を行う.なお,今後の課題として,実験結果の再現性をより確実に示すことが必要であるため,基礎データの取得と実験装置の安定性を実現するための装置改良を同時に進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行額は異なったが,研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含め,当初予定通りの計画を進めていく.
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Research Products
(1 results)