2014 Fiscal Year Research-status Report
自動車排気ガス中の二酸化炭素を積極利用したイオン液体による新規潤滑システムの構築
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24656107
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
七尾 英孝 岩手大学, 工学部, 助教 (50312509)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イオン液体 / 超臨界二酸化炭素 / 潤滑 |
Outline of Annual Research Achievements |
超臨界二酸化炭素(以下scCO2)処理によるイオン液体(以下IL)の潤滑試験に先立ち,ILへの二酸化炭素(以下CO2)吸収を確認した.ILの種類にもよるが,処理済みILは大気中90分経過しても,1.5 mol%程度のCO2が吸収された状態であることが分かった. ILのカチオンおよびアニオン種と,scCO2によるILの潤滑性の変化との間に明確な相関は見出せなかった.しかしながら,アニオンがビストリフルオロメタンスルホニルイミドのILでは,scCO2処理により摩擦係数が低減する傾向があった.一方,scCO2処理の潤滑性への影響が小さかったものの,今回用いた各種ILで低摩擦・低摩耗を示したのはリン原子を含んだものであった.特に潤滑性に優れたのは,1,3-ジメチルイミダゾリウムジメチルフォスフェート(以下DMIM-DMP)であった.潤滑性向上は,摩擦低減効果においては,摩擦試験終了時にはscCO2処理有無に関わらず同程度の値となったが,scCO2処理により摩擦初期の摩擦係数上昇を抑制するというかたちで確認された.また,摩耗低減効果においては摩擦試験片の摩耗痕幅の減少というかたちで確認された. このscCO2処理によるILの潤滑性向上のメカニズムを解明すべく,scCO2処理DMIM-DMPで摩擦試験した試験片上に形成された摩耗痕を飛行時間型二次イオン分析装置によって表面分析した.その結果,ILと試験片とのトライボ化学反応によって形成されたと考えられるリン酸鉄由来のフラグメントイオンFePO2+が検出され,このリン酸鉄が潤滑性の被膜として働き,特に摩耗抑制効果を発揮したものと考えられる.しかしながらCO2由来のフラグメントイオンは検出されず,CO2が耐摩耗効果にどう関与したか未だ不明であり,これを明らかにすることが重要であるとの課題が浮上してきた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は,本来平成26年度で終了するものであったが,【研究実績の概要】にも記した通り,超臨界二酸化炭素処理したイオン液体の潤滑性向上に関するメカニズム解明という最終目的に到達できていない.なお,このメカニズム解明に関しては,承認された「科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)補助事業期間延長」により平成27年度に達成することを目標とする.
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Strategy for Future Research Activity |
イオン液体はその種類の多さが特徴であるが,現段階において超臨界二酸化炭素処理により潤滑性が向上したイオン液体に焦点を絞り,【現在までの達成度】で記した目標を達成するべく精密な表面分析に注力する予定である.また,研究成果を論文投稿,学会発表する予定である.
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Causes of Carryover |
【研究実績の概要】で記したように,本研究課題の目的である,超臨界二酸化炭素処理イオン液体の潤滑性向上のメカニズム解明に到達できていない.この目的達成には種々の表面分析が必要であるが,そのための費用を執行できなかったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
基本的には上記理由に記した通り,主として表面分析装置使用料に充てる予定である.これに加え,論文投稿および学会発表費用としての使用も計画している.
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