2012 Fiscal Year Research-status Report
境界潤滑の理論体系構築のためのナノ摺動すきま形状顕微鏡
Project/Area Number |
24656112
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
福澤 健二 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60324448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 伸太郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50377826)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | トライボロジー / 摺動すきま / エリプソメトリー / 顕微鏡 |
Research Abstract |
本年度は,本研究で提案するエリプソメトリーの原理を用いたすきま形状観測の原理確認をねらいとして光学系を構築した.本研究では,倒立顕微鏡を改造し,エリプソメトリーの原理を用いて摺動すきまの分布を像として一括計測可能な顕微鏡光学系とした.エリプソメトリーには斜め入射光で試料を照明することが必要だが,エリプソメータと同様の斜め観測光学系をそのまま適用すると,視野がサブマイクロメータ程度しか確保できないという原理的な課題が生ずる.そこで,対物レンズを試料面に垂直に配置し,さらに照明光を後側焦点面に集光し入射角の大きな平行光に変換する光学系とすることで課題を克服することとした.偏光子,1/4波長板および検光子により,基板を透明なものとして基板上方に配置した摺動プローブとの間の摺動すきまの違いによる偏光状態の変化を輝度として可視化できる系とした.そして,構築した系を用いて,エリプソメトリー顕微鏡としての原理確認に成功した.また,面内分解能についても0.1μmオーダとほぼ回折限界が達成可能であることを確認した.この系を用いて,光ファイバプローブと透明基板を用いてすきま測定の課題抽出を行った.透明基板からの反射光を用いて可視化するので,観測光の光量が不足することが判明した.一方,エリプソメトリーとしては単色光が必要であるが,単色光源は光干渉による雑音像を発生する.そこで,光強度が高く光干渉性を抑えた光源を種々試み,LED光源が最良であることを見出した.さらに,エリプソメトリー信号の数値シミュレーションを行い,摺動プローブのコーティングによりこの課題が解決できる見通しを得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度のねらいとしていたすきま形状観測の原理確認のための光学系を構築し,本研究の最も基本となるエリプソメトリー顕微鏡としての原理確認を達成した.さらに面内分解能についてもねらい通り,回折限界に近い分解能を達成した.以上のように基本特性はねらい通りのものを達成できた.そして,構築した系を用いてすきま形状観測系としての課題抽出を行ったところ,当初想定したように,透明基板を対象とした観測であるため光量が不足することを見出した.これに対する対策として,単色光顕微鏡の課題である干渉性雑音を抑えて,高い光量を有する光源としてLED光源を用いること,および数値シミュレーションによりプローブにコーティングすることで課題解決の見通しを得た.以上,おおむね順調に進展していると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続きすきま形状観測系の改良を進める.前年度判明したSN比の向上を図り,静的なすきまを対象とした原理確認と基本特性の確立を優先する.まず,プローブコートなどにより光強度の増強を図る.摺動子については原理確認のしやすいものとする.また,油浸対物レンズを用いた入射角の増大によるSN比の向上も検討する.必要に応じて構築した倒立顕微鏡をベースとした光学系を改造する.静的なすきまを対象とした原理確認と基本特性の確立を優先し,その結果を考慮した上で,摺動すきま計測への展開を検討する.水平方向に加振した摺動子と基板との間のすきま形状を画像として一括計測する.さらに,光源を強度変調しプローブ加振の位相(タイミング)と同期したストロボ撮影については,摺動すきま計測実験の結果を考慮した上でその展開を検討する.以上の結果から,すきま形状と力学応答の関係の定量化の可能性を検討し,境界および混合潤滑領域における流体潤滑理論検証に向けた本方法の有効性を検討する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に引き続きすきま形状観測系の改良を進める.光強度の増強のためのプローブコートは,まず現有の真空蒸着装置を用いて金属膜のコートを試みるが,材質などの条件によっては外部の業者に委託する.静的なすきまを対象とした原理確認と基本特性の確立のための光学部品や機構部品を購入する.必要に応じて現有の倒立顕微鏡の改造も検討する.静的なすきまを対象とした原理確認および基本性能の確立を優先し,その結果を考慮した上で,摺動すきま観測系,さらにストロボ観測系の構築について検討する.
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