2012 Fiscal Year Research-status Report
クラッシュした磁気ディスクからの記録データ復元技術の開発
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24656115
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
谷 弘詞 関西大学, システム理工学部, 教授 (40512702)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | トライボロジー / データ復旧 |
Research Abstract |
本研究では、HDDのデータ復旧で特に困難と推定される磁気ディスクが損傷した場合の、損傷部以外のデータを復旧させる技術の確立を目的とする。具体的には、①摩耗粉の飛散した磁気ディスク面のクリーニング技術の開発、②ディスクに塗布された潤滑剤のリンス技術の開発、③再塗布する潤滑剤の検討と再塗布技術の開発、④データ読み出し技術の研究、の4点である。そこで、本年度はディスク面の摩耗粉除去を目的として以下の検討を行った。 ①磁気ディスク表面の潤滑膜は磁気ヘッドスライダとの接触によって表面が荒れており、かつ摩耗粉が潤滑剤によるメニスカスで強固にディスク面に付着している。そこで、磁気ディスク表面の潤滑剤除去技術の確立のため、潤滑剤の溶媒であるバートレルにメタノールを33%混合した溶媒を用いてリンスすることで、化学吸着した潤滑膜のみを残して除去できることを確認した。しかしながらこのままでは、リンスムラができることから、バートレルによる追加リンスが必要なことを見出した。 ②ディスク面のクリーニング技術としてテープクリーニングの条件検討を行い、擬似クラッシュさせて摩耗粉が付着したディスク面のクリーニング条件を見出した。この条件でテープクリーニングを行うことで、数千個の摩耗粉を数10個レベルに除去可能なことを確認した。また、カーボンナノチューブ(CNT)バーニッシュヘッドによるクリーニングの検討では、CNTバーニッシュヘッドのスライダ面テクスチャ形状とCNT長さの影響を調べて、クリーニング効果の高いテクスチャ形状とCNT長さとの組合せを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
潤滑剤の除去条件、ディスク面のクリーニング条件の検討は完了した。残課題は(1)クリーニングに適した潤滑剤の再塗布技術の確立、(2)クリーニングしたディスクのデータ読み出し技術の確立の2項目であり、平成25年度で十分完了できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、まず、クリーニングに適した潤滑剤の再塗布技術の確立を行う。スクラッチを発生させにくい潤滑剤を再塗布ために、極圧添加剤としてフォスファゼン環を末端に有するパーフルオロポリエーテル(PFPE)潤滑剤と水酸基を両末端に有するモバイル性の高いPFPE潤滑剤を混合し塗布し、クリーニングを行いスクラッチの発生量を比較して、最適塗布条件を求める。 次に、クリーニングしたディスクのデータ読み出し技術の確立を行う。表面をクリーニングしたディスクから、記録されたデータを復元する必要がある。そこで、HDDに搭載された状態で、ディスクをクラッシュさせて、そのディスクをスピンドルから外して、表面クリーニングを行い、再度スピンドルに組み込み、記録データを再現可能かどうかの検証を行う。特に、クラッシュした半径位置を横切る場合に、クラッシュの拡大が想定される。その影響を見積もるために、スピンスタンドを用いて同様のスイープ試験を行い、影響度を見積もり、スイープ速度やクラッシュ位置の影響を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
潤滑剤再塗布のための潤滑剤、溶媒、テープクリーニング用のテープ、バーニッシュヘッドなどを消耗品として購入。 また、結果を公開するために学会発表を行うので、そのための旅費、論文出版経費などを計画している。
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