2012 Fiscal Year Research-status Report
流体/固体遷移領域における発泡体破砕メカニズムの解明
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24656119
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
亀田 正治 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70262243)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 流体工学 / 固体地球惑星物理学 / 火山爆発 / 破壊 / 粘弾性 |
Research Abstract |
爆発的噴火のきっかけとされる急激な遷移現象~発泡マグマの「破砕」~に焦点を絞り,連携研究者(東京大学・地震研究所・助教,市原美恵氏)とともに,工学的手法に基づく精密室内実験から現象の詳しい過程を明らかにすることを目指した. 本年度は,天然の噴火でしばしば見られる,マグマが流体(流動状態)と固体(脆性状態)の中間的な性質を示す時間スケールでの「脆性的破砕」の発生メカニズムの解明を進めた.これまで積み重ねてきた急減圧装置による発泡体破砕実験データを詳細に解析した結果,脆性的破砕は,マグマ内の差応力が破壊に必要な臨界差応力を維持しているタイムスケールの範囲であれば,マグマが流体的な性質を帯びるタイムスケールでも生じる固体的な破砕現象であることを明らかにした.さらに,その発生は,試料の不均一な気泡分布によって試料内部でき裂が成長し,そのき裂が試料表面に達した段階で試料内部のガスが急激に放出されることによって,試料の局所が急減圧にさらされることが原因であるとの見通しを得た.このストーリーが2011年に発生した霧島新燃岳の噴火現象を良く説明できることも分かった. 以上のメカニズムを実験的に明らかにするため,試料内部の気泡分布状態のモニタリング方法を検討した.まず,超音波探傷を試みたところ,試料が発泡体であることなどから,内部に生じるき裂等の位置を正確にとらえることは難しいことが分かった.そこで,1月17日から19日にかけて,(公財)高輝度光科学研究センター,通称SPring-8に出張し,先方の技術者とX線CT撮影によるモニタリング実現可能性を詳しく検討した結果,十分な精度で発泡体の3次元構造をとらえることが可能,という見通しが得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
発泡マグマの「破砕」,特に,天然の噴火でしばしば見られる,マグマが流体(流動状態)と固体(脆性状態)の中間的な性質を示す時間スケールでの「脆性的破砕」の発生について,工学的手法に基づく精密室内実験から現象の詳しい過程を明らかにすることを目的として研究を進めている. これまでの急減圧実験データを詳しく解析した結果,実験結果全体を,マグマのレオロジーを考慮に入れた破砕過程数理モデルで解釈できる見通しが得られ,その結果をまとめた雑誌論文を投稿し,H25年4月8日に掲載が決定している. 当初は,超音波探傷と外部からの高速度カメラ撮影の組み合わせによる試料内外の複合リアルタイムモニタリングを目指すことを計画していた.しかし,実際に,超音波探傷によるモニタリングを試みたところ,我々が必要とする空間分解能で試料内部の空隙をモニタすることは困難ということが分かった.そこで,代替手段として,大型放射光施設(SPring-8)に試料を持ち込み,X線CTの試し撮影を実施した結果,本実験で用いている発泡体の内部構造を30 マイクロメートルの分解能でとらえることが可能,という結果が得られた.H25年度は先方の施設で急減圧実験を実施する予定にしており,現在,実験装置の設計,製作を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究実施計画は以下のとおりである. (1)X線CT撮影による試料内気泡分布の把握と急減圧破砕実験(亀田,(市原美恵,奥村聡),農工大学生4名(志田司,津郷光明,土本雄大,青木ヤマト))大型放射光施設SPring-8に,小型急減圧破砕実験装置を持ち込み,X線CT撮影による減圧開始前の試料内気泡分布像の取得する.並行して,減圧時の試料内き裂進展挙動をX線透過撮影によって調べ,本研究グループが現段階で提案しているストーリー通りの現象が生じているかどうかを確認する.小型急減圧破砕実験装置として,グラファイト管などを用いた圧力容器,H25年3月に設置した圧力制御モジュールを中心とする加減圧配管系を新たに製作する.また,SPring-8の利用時間に厳しい制約があるため,連携研究者である市原美恵氏,本学学生4名を実験補助者として現地に同行する.また,同地での豊富な実験経験を有する東北大学・理学研究科・助教の奥村聡氏にも助言を求める. (2)発泡粘弾性体におけるき裂の進展挙動の解明(亀田,(市原,山中晃徳))(1)で得られた撮影結果を解析し,単純化した発泡体モデルを対象としたき裂進展シミュレーションを実施する.マクスウェル粘弾性モデルを実装する有限要素法解析ソフトウェア(新規購入)を用い,非等方な気泡分布による応力集中(局所的な「脆性度」)を評価する.並行して,農工大・工学研究院・准教授の山中晃徳氏の助言に基づき,フェーズフィールド法によるき裂の進展シミュレーションを進め,実験観察で得られた現象の数理モデルによる表現可能性を実証する. 5月に幕張で行われる地球惑星科学連合大会,7月に鹿児島で行われる国際火山学地球内部化学協会2013年学術総会(IAVCEI 2013)での口頭発表を予定している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費800,000円:小型急減発破砕実験装置 1式 300,000円;有限要素解析ソフトウェア 1式 300,000円;計算用PC 1台 200,000円 旅費600,000円:SPring-8実験(5名,3泊4日,2回,45,000/人/回)450,000円;成果発表IAVCEI(2名,鹿児島,3泊4日,75,000/人)150,000円 謝金 256,000円:実験補助(4名×8日×8時間×1000円)256,000円 その他123,736円:学会参加登録料(地球惑星科学連合大会10,000,IAVCEI 65,000)75,000円;機器の輸送料48,736円
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Research Products
(5 results)