2013 Fiscal Year Research-status Report
密度成層流体における鉛直流れとラグランジュ的鉛直拡散の解明
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24656124
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
花崎 秀史 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60189579)
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Keywords | 成層流体 / 鉛直運動 / ジェット |
Research Abstract |
密度成層流体の研究は、従来、水平流れに関するものがほとんどであり、鉛直流れや鉛直拡散に関する研究はほとんど行われて来なかった。しかし近年、鉛直流れの解明の必要性が高まっている。深海の温度・塩分・流速測定を行う海洋観測機器の鉛直移動制御や、地球温暖化予測の鍵となる海洋プランクトンの鉛直移動など、新たな重要な応用対象が出てきたからである。本研究は、これまでほとんど未解決である成層流体中の鉛直拡散と鉛直運動の解明のため、成層流体中を鉛直移動する球まわりの流れ場を解明する。それにより、成層流体中の鉛直拡散や鉛直運動のメカニズムを解明し、上記の応用対象に根本から寄与することを目標とする。 平成25年度は、塩分成層流体中に蛍光染料を塩分濃度に比例した濃度で溶かし、LIF(レーザー誘起蛍光法)によって測定した蛍光染料濃度から塩分濃度、従って密度分布を測定した。特に、球面上にできる密度境界層内と、鉛直降下する物体の上方にできるジェット内部の密度分布に注目して測定し、密度境界層内の流体が上昇してジェットを形成する流体となっていくことを支持する事実として、非常に薄い密度境界層の厚さとジェットの太さとの強い相関を明らかにした。また、密度境界層の厚さ及びジェットの太さのレイノルズ数およびフルード数依存性を解析した。同時に、これまで前例のほとんどない、塩分に対応する高シュミット数(Sc=700)の数値計算を行い、多くの点で上記の実験結果と定量的に一致する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に確立したレーザー誘起蛍光法による流体密度(塩分濃度)の測定法を用いて、成層流体中を一定速度で鉛直移動する球について、球面上に生成される密度境界層の内外の密度分布、および、下降する球の上方に生成されるジェット内外の密度分布を測定した。また、対応する高シュミット数のスカラー輸送の数値計算を、実験とほぼ同じシュミット数、レイノルズ数およびフルード数のもとで行った。その結果、実験と数値計算がかなりよい一致を示し、両者が共に信頼できるレベルにあることが確認できた。今後、水槽実験については、PIV(粒子画像追跡法)を用いて速度場の計測も同時に進めることにより、流れ場全体の描像が明らかになると考えられる。数値計算に関しても、後はパラメータを変えた計算を実行し、結果を解析すればよい状況となっている。よって、おおむね順調な進展と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、レイノルズ数、フルード数を変化させた各種の条件下で、LIFを用いた球面上の密度境界層の厚さ、及び、密度分布から定義されるジェットの太さの測定を継続して行うほか、新たに、PIV(粒子画像追跡法)を用いた測定を行い、球面上の速度境界層の厚さ、および、速度分布から定義されるジェットの太さの測定を行う。密度場、速度場両方の測定を同時に行うことにより、成層流体中を一定速度で鉛直移動する球によって生成される流れ場の全体的な描像を明らかにする。数値計算については、レイノルズ数、フルード数を変化させた計算を行い、水槽実験との比較を行うと同時に、シュミット数も変化させ、現有の実験装置では測定困難な成層媒体についての解析も行う。上記により、最も基本的な形状である球形粒子の鉛直移動による流れ場を測定、解析する。そのうえで、そうした流れ場が出現するメカニズムを考察、解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究自体はおおむね順調に推移しているが、平成25年度に、平成24年度の残額分を余分に使い切るに至らなかったため、次年度使用額が発生した。平成25年度は実験装置の改良よりもデータをとることを優先したことが原因の一つである。また、数値計算についても、平成25年度は、すでに所有しているワークステーションでの計算を中心に行ったため、あまり費用が発生しなかった。 平成26年度は最終年度であり、最終的なデータにできるよう実験精度を向上させる必要がある。このため、実験装置の改良に費用を使う予定である。また、数値計算についても、平成26年度は、計算解像度を上げた計算を多く行うため、有料のスーパーコンピュータの利用する予定であり、前年度までの残金を含めた交付額を全額使用する予定である。
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