2013 Fiscal Year Annual Research Report
群論に基づく自己集合化・自己組織化パターン形成の分子流動シミュレーション
Project/Area Number |
24656126
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川野 聡恭 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (00250837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土井 謙太郎 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (20378798)
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Keywords | 自己組織化 / 自己集合化 / 対称性 / 群論 / 分子流動シミュレーション |
Research Abstract |
鎖状高分子の自己組織化・自己集合化のシミュレーションでは,無数にある初期配置から任意の構造をランダムに選択するため,試行回数は膨大となり解析の大きな障壁となる.申請者らは,そのような困難に関して系の持つ対称性に着目し,無限にある状態数から妥当な結果を絞り込む手法を提案してきた.本研究では特に,現象の時空間スケールに着目しながら,系の持つ対称性を群の既約表現として考慮する手法を提案する. H24年度は,グラファイト表面におけるDNA断片の自己集合化について,原子間力顕微鏡による観察に加えて,分子動力学(MD)法を用いたパターン形成シミュレーションを行い,現象のスケールに対して両者の比較を行った.DNA断片は総じて負電荷を持つが溶液中ではその周囲に陽イオンが存在するために,特徴的な凝集構造が現れることを確かめた.一方で,実験で得られる時系列データから,特徴的なパターンが得られるのは,10 minオーダの拡散を経た後の結果であり,MD法だけではパターンに及ぼす基板表面の対称性の影響を断定できないことが明らかとなった. H25年度は,分子の吸着・脱離と拡散に基づき,自己集合化パターン形成に対する基板表面の持つ対称性の影響について検討を行った.二成分の反応拡散モデルにおいて,基板表面に吸着・脱離する分子の相互作用を表す関数として,表面の電子状態に関して群の既約表現に対応した関数を付加することを提案した.数値解析の結果,実験結果に見られるような,表面に吸着した分子の周囲に凝集しながらパターンを形成する過程は,数値解析の不安定解に見られる傾向に対応していることが示された.表面構造と吸着分子が同スケールの場合は,表面のパターンが浮かび上がるように分子が吸着し,両者の比が大きくなると,表面のパターンを直接的に反映するわけではないが,その影響を受けた特徴的なパターンが得られることが示された.
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