2012 Fiscal Year Research-status Report
レーザープロセスによるSWNT単一ナノチャネルの作製と分子吸脱着現象の観測
Project/Area Number |
24656140
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河野 正道 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50311634)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千足 昇平 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50434022)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | レーザー / SWNT / ナノチャンネル / 細孔 / 吸脱着 |
Research Abstract |
本年度は真空チャンバーならびに真空チャンバー内の光学系を構築し,加工雰囲気圧力,レーザー光の波長および偏光がSWNTのレーザー加工におよぼす影響を検討した.まず真空チャンバー並びに光学系の構築であるが,真空チャンバー内に真空対応のXY電動ステージを設置して,集光レンズは収差の影響を抑えるためにME(Multi Optics)レンズを使用した.試料はアルコールCVD法でシリコンもしくはガラス基板上に生成された,ランダム配向,垂直配向および水平配向のSWNT3種類である.加工はスポット加工とし,加工されたSWNTの評価はFE-SEMならびにラマン分光(波長488nm)で行った. まずランダム配向しているSWNTに対して532nmおよび266nmのレーザー光を用いて波長の効果を検討した結果,266nmで加工された試料の方が加工面が滑らかで有り,ラマン分光においても加工の際にダメージを受けるSWNTの割合が小さいことが分かった.これは266nmの1光子あたりのエネルギーが4.66eVであり,炭素間の結合エネルギーより大きいことから炭素間の結合を直接切断する効果がある程度現れたものと考えられる.次にレーザーの波長を266nmに固定し,大気中および減圧下での実験を行い,減圧の効果を検討した.その結果,減圧下で加工をした方が,加工面のエッジが滑らかであり,ラマン分光においても加工の際にダメージを受けるSWNTの割合が小さいことが分かった.酸素が少ない環境で加工を行うことにより,レーザーで加熱されることによるSWNTの温度上昇に起因するSWNTの燃焼をある程度抑えられたためと考えられる.垂直配向SWNTを試料とした加工にて,レーザー波長,雰囲気圧力の効果を検討したが,基本的にランダム配向と同様の傾向であった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず実験環境の整備に関して,真空チャンバーならびに真空チャンバー内の光学系を構築し,加工雰囲気圧力がSWNT加工におよぼす影響を検討可能とした.真空チャンバー内に真空対応のXY電動ステージを設置して,集光レンズは収差の影響を抑えるためにME(Multi Optics)レンズを使用した構成となっている. 試料の生成に関しても,本研究で使用するシリコンもしくはガラス基板上に生成された,ランダム配向,垂直配向および水平配向のSWNTをアルコールCVD法で安定的に生成可能な状況である. レーザー加工実験に於いても雰囲気圧力・レーザー波長の検討を終えている.レーザー偏光が加工に及ぼす影響については引き続きH25年度も検討するが,概ねの傾向を把握した状況である. SWNTナノチャネルによる分子検出法の開発に関しては,使用する真空チャンバーの設計を終えており,H25年度の早い時期に実験を開始出来る状況である.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は「SWNTナノチャネルによる分子検出法の開発」を中心に研究を推進する.代表者・河野がナノチャネル作製およびラマン分光を担当し,分担者・千足が蛍光分光を担当する.前年度に引き続きレーザーによるナノチャネル作製を行うのに加えて,SWNTナノチャネルによる分子検出法の開発を行う.SWNTは1枚のグラフェンシートを丸めた構造であり,非常に比表面積が高い.その為,その物性は表面からの影響を強く受けて変化する.この性質を利用し,SWNTナノチャネル内の流体や気体,またその状態の検出を試みる.これまでの研究例から,SWNT表面にエタノール分子が吸着した際に,近赤外蛍光分光を適用すると,吸収する光の波長と発光波長の両方が変化することが知られている.従って,作製したSWNTナノチャンネルをエタノールガス雰囲気中に暴露し,エタノール圧力を変化させる実験等を行う計画である.他にSWNT物性の光学分光法として広く用いられるラマン分光法も含め,光学的手法を用いた単一SWNTナノチャネル内の分子・イオンなどの検出法を開発し,ナノチャネル内での流体,分子の振る舞いについての理解を進めていく. 最終的には,ナノチャネル内における流体現象,界面でのイオンの振る舞いなどナノスケールにおける特殊な現象の分析を行う.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費・・・・・H24年度に真空中でレーザー加工システムを構築したことから,今年度は光学部品,真空部品,試料・基板,ガス類,薬品類の購入を主な使途とする. 旅費・・・・・研究打合せのならびに国内での学会発表出席を主な使途とする. 人件費・謝金・・・・・研究補助を主な使途とする. その他・・・・・学内共通施設における装置使用料(FE-SEM)を主な使途とする.
|