2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノ流体と爆発衝撃新素材を用いた革新的沸騰伝熱促進と機構解明
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24656142
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
鳥居 修一 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (30180201)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ナノ流体 / ナノ粒子 / 沸騰伝熱 |
Research Abstract |
まず、爆発衝撃で製作したプレートを持つ発熱部を製作すると同時に、同型の冷却部も製作した。これを4つのパイプで固定し、発熱部を減圧すると同時に、作動媒体を充填した。発熱部には、電気ヒータ(最大熱流束が約100W/cm2)を面接触させた。また、一方の冷却部は水冷ジャケットで被った。ヒーター部には、内部に異なった位置(但し、この間隔は5mm)に熱電対(0.5mm)を挿入し、ヒーター内部の熱流束を見積もることができるようにしている。まず、定電源装置からヒーターへ電流を流すことによってヒーターを加熱する。同時に2つの熱電対の温度差より熱流束を算定した。 加熱部と冷却部の表面に熱電対(0.5mm)を5箇所設置して、各表面の平均温度を計測する。まず、作動媒体として純水を使用した。その結果、熱流束が増加するに従って、加熱部と冷却部の表面温度は共に増加した。 ナノ粒子として、ナノダイヤモンド(粒子直径は10ナノ)とアルミナ(粒子直径は30ナノ)を用いてナノ流体を製造した。これを作動媒体とした場合の実験を上述と同じ方法で行なった。その結果、熱流束が増加するに従って、加熱部と冷却部の表面温度は共に増加する傾向が得られた。しかし、加熱部と冷却部の表面温度は共に増加するものの、同じ熱流束が印加された時の加熱部と冷却部の温度はナノ流体を使用した場合の方が低いことが分かった。 一連の結果から、ナノ流体を使用した方が伝熱性能が高いことが分かった。このことはナノ流体を使用することで、発熱部で発生している沸騰伝熱が促進されていることを意味する。この結果は、冷却能力が格段に増加し、冷却対象の電子機器と冷却材の温度差 を小さくできるので、機器のコンパクト化と軽量化が期待できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子・電気機器の放熱性を飛躍的に促進させるためには、革新的熱除去技術の開発が必要である。革新的沸騰伝熱面の開発と作動媒体としてのナノ流体の使用が確立されれば、機器の高性能化、軽量化、コンパクト化が著しく促進される。本構想は、熊本大学衝撃・極限環境研究センターが有する爆発衝撃実験施設を使用して、ナノダイヤモンドを容易に製造してナノ流体をつくり、更に、爆発衝撃波でナノダイヤを浸透させた沸騰伝熱面を持つ素材を製作し、この伝熱面とナノ流体による沸騰実験を行うことで、沸騰伝熱の限界熱流束を飛躍的に向上させることにある。 爆発衝撃で製作したプレートを持つ発熱部と冷却部を製作して、沸騰伝熱面を持つ装置を完成させた。作動媒体として「純水」と「ナノ流体(ナノダイヤモンドナノ流体、アルミナナノ流体)」を用いた伝熱実験を行なった結果、純水を使用した場合より、ナノ流体を作動媒体と使用した方が伝熱性能が向上することが明らかとなった。この結果は当初の目的を満足したものとなっている。更に、ナノ流体を使用しただけでは、熱流束を100W/cm2を遥かに超える場合に十分な冷却性能が得られないことは既存の研究成果で報告されているので、今回の結果は、「爆発衝撃波によって加工面の沸騰促進効果」と「ナノ流体を用いた対流伝熱促進効果」の相乗効果によって限界熱流束が大きく向上したことが窺える。従って、現段階までの研究の進捗状況は当初の目標を達成しており、順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
作動媒体に純水を用いた実験を継続する。ナノダイヤモンドの量と爆薬の量の異なった場合の沸騰伝熱面を有する平板を使用して、研究室内の高速度ビデオカメラ(1秒間に2000コマ記録)を用いて核生成を記録する。この場合、使用している装置を可視化ができるように改良する。また、作動媒体にナノ流体を用いた実験を継続する。製作した沸騰伝熱面を有する幾つかの平板(処理を施していない平板も含む)を使用し、研究室内の高速度ビデオカメラ(1秒間に2000コマ記録)を用いて核生成を記録する。 使用するナノ流体のナノダイヤモンドの体積分率の異なった作動媒体を用いて、同様の実験を行う。ここで、ナノ流体は研究室で開発したものを使用し、対応するナノ流体の体積分率は0.1%,1%及び5%である。 一連の実験を行うことによって、「爆発衝撃で製作した沸騰伝熱面の効果」、「沸騰に及ぼすナノ流体の効果」、「双方の相乗効果」を子細に検討し、限界熱流束が著しく高かった時の沸騰伝熱面を用いた実験と対応する核形成を相互に考察することで、沸騰促進のメカニズムを明らかにする。 ナノ流体を使用する際、従来の使用例は対流伝熱が多く、相変化を伴う現象への応用は大変少ないので、ナノ流体の相変化を伴うことによる経年変化(長時間使用した場合のナノ粒子の凝集や劣化)を把握することも検討する。これを明らかにしておくことで、ナノ流体の伝熱機器への応用の際の開発指針となることが予想される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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