2012 Fiscal Year Research-status Report
ソーレ効果を活用したガス分離用マイクロ流体デバイスの開発
Project/Area Number |
24656146
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
小野 直樹 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (20407224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 壮平 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (70358050)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ソーレ効果 / ガス分離 / 水素ガス / MEMS / マイクロデバイス / 物質移動 |
Research Abstract |
平成24年度の研究では、今までの筆者の研究結果に基づき、超小型デバイスをシリコン基板およびホウケイ酸ガラス基板を用いてMEMSプロセス(産業技術総合研究所の装置使用)によって新しく製作し、その水素ガス分離の基本性能を実験的に確認することに注力した。今回は流路構造として、厚み200μm、幅20mmの扁平な流路を持つデバイスを試作し、その上面(水冷)と下面(ヒータ加熱)に温度差80℃を付加し、流量20ml/minとして、水素―二酸化炭素の混合ガスのガス分離実験を実施した。その結果、出口にて、0.3~0.4%の水素濃度変化(濃縮)が見られ、このデバイスにおいてもソーレ効果が駆動されており、水素の分離現象が生じていることが実証できた。今回は印加する温度差がまだ80℃と小さいので分離効果も小さいが、これについては部品の耐熱温度の改善やデバイスの多段化によって解決できるものと考えている(筆者の過去のデータでは温度差を450℃とすると、4%前後の水素濃度変化(濃縮)の分離が可能である)。また多段化の効果についての基礎的な試算も実施し、デバイスを12段以上繰り返すと、水素濃度として90%以上に分離が可能となることが予測できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MEMSプロセスを利用してマイクロデバイスを試作することは、この研究においては初めての試みであった(昨年までは全て自作によってミリスケールの装置を製作していた)。流路構造の検討と設計から始め、基板材料やプロセスの選定および製作作業を通じ、最初のデバイスを試作したところ、幸いほとんど失敗もなくスムーズに試作を進めることができた。製作したデバイスには漏れや欠けなどの欠陥がなく、そのまま温度差を印加して水素ガス分離の実験に供し,分離効果を確認することできた。効果の確認に成功したことについては,材料の熱伝導率や流路形状などMEMS加工上の制約がデバイスの機能に及ぼす影響が想定の範囲内で済んだこともその理由に挙げられる。印加する温度差が80℃とまだ小さいので分離効果は小さく、これから検討する部分は残っているが、初回の試作デバイスから、ソーレ効果によってガス分離効果が生じることを実験的に確認できた点は重要で、順調に研究が進んだと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、デバイスの多段化へのステップとして、2段に接続したデバイスを試作する。前年度と同様に、産業技術総合研究所のMEMSプロセスを使用して製作する。すでにこの2段デバイスの構造のアウトラインは決めており、具体的な設計と作業計画を策定後、製作作業に入る。製作したデバイスは芝浦工業大学に持ち帰って、ガス分離実験およびガス分析を実施して水素の分離を測定する。課題点としては、2段になると流路が長く複雑になるため圧力損失の影響が懸念され、スムーズなガス流動が実現できるか、また最終出口からガス分析に十分な流量が確保できるか等の点があげられる。流れの問題に関しては三次元の数値シミュレーションも援用して取り組む計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、2段のデバイスを試作するために、このための材料(シリコン基板および石英ガラス基板)が必要である。前年度と異なり、構造が複雑になるため、製作の試行錯誤も十分予想され、試作工程として2~3バッチを予定している。このため材料費は前年より多めに使用する予定である。またデバイスの各部品(チューブのコネクターや接着剤)については耐熱性の高いものに変更し、同時に冷却装置の能力向上も実施する。また2段になると圧力損失(流路抵抗)の問題も大きくなることが予想されるため、系の各部に圧力計や流量計を設置して流路系内の流量バランスや圧力バランスを計測する装置にも研究費を使用する。
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