2013 Fiscal Year Research-status Report
ソーレ効果を活用したガス分離用マイクロ流体デバイスの開発
Project/Area Number |
24656146
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
小野 直樹 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (20407224)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 壮平 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (70358050)
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Keywords | ソーレ効果 / ガス分離 / 水素ガス / MEMS / マイクロデバイス / 物質移動 |
Research Abstract |
平成25年度の研究では、MEMSプロセス(産業技術総合研究所の装置使用)によって昨年度製作したデバイスで得られた成果を踏まえて、今度は流路を2段階にして水素ガスの分離が促進(倍増)されるかを確認することを目的とした。流路構造は昨年度のものと似て、厚み200μm、幅15mmの扁平な流路としており、MEMSプロセスで流路を掘り込んだシリコン基板を、出入り口の穴を開けたホウケイ酸ガラスの板が上下から挟んでいる構造となっている。この流路を3セット製作し、そのうちの2セットでまず1段目の分離を実施し、半分の流量になった出口からのガスをそれぞれ一つずつ集めて残りの1セットの入口に流入させて2段目の分離を実施した。1段目の流路の入口に、水素50%+二酸化炭素50%の混合ガスを、流量を20ml/minから200ml/minまで変化させて流入させた。昨年度と同様にガスコネクター部分の接着剤の耐熱性の制限から上面(水冷、0℃)と下面(ヒータ加熱、80℃)の温度差は80℃までしか付けられなかったものの、1段目で0.4%の分離効果、2段目で0.8%の分離効果が得られた。水素が濃化したガスの流量は1段につき半減するものの、2段にすることで濃縮度は倍増することが証明できたと言える。但し、この方式の課題も明らかになってきた。例えば、段数の増加によって内部の圧力損失(抵抗)が増してガスが流れにくくなっており、流量が少ない時の分離効果の低下が見られた。またデバイスの出口2つのうち、水素が濃縮していない(濃度が逆に下がった)側の出口からのガスの利活用(リサイクル等)などが挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MEMSプロセスで製作したデバイスを用いて、2段の流路にしても予想通りソーレ効果が駆動しており、水素の濃化が2段にすることでほぼリニアに倍増されることを確認できたことは進歩と言える。但し、印加した温度差が80℃と小さいために分離効果は1%程度の小さい値のままであるので、今回は多段分離の効果の証明という意味での成果はあったが、実用性に対しては継続して検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
シリコン基板とガラス板で製作したこれまでのデバイスでは、どうしても流路コネクターの接着部の耐熱性の制約で80℃程度までしか昇温できないため、平成26年度では、ステンレス等の金属でデバイスを製作して500℃程度の温度差をガスに加える実験を実施し分離効果の大幅増加を狙う。またこの金属製デバイスを用いて2段や3段の分離の実験も実施する。しかし将来を見据えた場合、段数増加によって圧力損失や水素濃度が逆に低下する出口からのガスの処理が深刻になるため、単独のデバイス内に旋回流を発生させるなどデバイス内部でのソーレ効果自体を大幅に向上させる案や、濃度低下したガスのリサイクルのための昇圧機構等も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、計画的に助成金を使用し、MEMSデバイスの製作および流量計等の装置購入に予算を使用した。しかしデバイスの製作にあまり失敗しなかったために試行錯誤の回数が少なく抑えられ、デバイスの故障時のために残していた金額が若干残った。 平成26年度は、デバイスを全て金属で製作するための材料(ステンレス等)や、流路の微細加工(機械加工や物理化学的加工)および金属板接着のための製作費用(外注加工含む)が必要である。試行錯誤も予想されるため、2~3セットの製作を予定している。またデバイス内のソーレ効果自体を高める実験のための特殊な流路(旋回流を発生させるための溝加工等を加える)の試作も実施する予定である。
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