2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24656165
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
平塚 祐一 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (10431818)
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Keywords | 熱ゆらぎ運動機関 / マイクロマシン / モータータンパク質 / 分子ロボティクス |
Research Abstract |
本研究の目的は、原始的な熱ゆらぎ運動であるインフルエンザウイルスの運動に着目し、その運動機構を真似た分子機械を作製することである。モータータンパク質をはじめとする生体運動には、ランダムなブラウン運動から一方向の運動成分を取り出す「熱ゆらぎ運動機構」を内包しており、これらが生体運動の高いエネルギー変換効率の源であると考えられている。熱ゆらぎ運動機構の応用利用は従来の動力機構に大きな変革を生み出す可能性を秘めている。そこで、最も原始的で単純と思われるインフルエンザウイルスの運動から、「熱ゆらぎ運動機構」の本質を学び、この作動原理で駆動するマイクロマシンの開発を行う。 インフルエンザウイルスの一方向性運動は、シアル酸に結合する能力を持つヘマグルチニンとそれを分解するノイラミニダーゼがウイルス表面に不均一(局所的に非対称)に配置されているためと考えられている。本研究では、この非対称構造をナノメーターレベルで人工的に制御された構造として作り出し、実際のウイルスよりも高効率に動くタンパク質超複合体を構築する。超複合体の骨格には、細胞骨格タンパク質である微小管を利用する。微小管の重合を制御することにより棒状構造の半分にヘマグルチニン、もう半分にノイラミニダーゼを配置する。 本年度の研究では、ヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼと同等の活性を有するレクチン(WGA、小麦胚芽凝集素)およびシアラーゼを利用した。これらのタンパク質を微小管と効率よく結合させるためベンジルグアニン(BG)と共有結合するSNAPタグを有した微小管リンカータンパク質を遺伝子工学的に作製した。生化学的にBG標識したWGAとSNAPリンカー分子および微小管に超複合体を作製した。この複合体をシアル酸を持つタンパク質(フェチュイン)コートした表面に添加したところ、超複合体が表面に強く結合する様子が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度と同様に本年度も、微小管を用いた超分子複合体の作成を行った。微小管と不可逆的に強く結合するキネシン変異体(T93N、微小管リンカー分子)のC末端にSNAP タグとよばれるベンジルグアニン(BG)と共有結合するタンパク質タグを遺伝子操作的作製し、それを介しレクチンを微小管に結合させた。シアル酸と結合するレクチンの一種小麦アグリチニンをベンジルグアニンで化学標識し、それらを混合することでキネシン・レクチン・微小管超複合体を作成した。 また、より一般的な系としてビオチン化レクチンおよびビオチン化微小管を用いてストレプトアビジンを介した複合体作製にも試みた。これらの場合すべて市販品を用いて構築した。 両者を比較したところ、微小管リンカー分子を用いた場合、超分子複合体はフェチュイン(シアル酸を持つタンパク質)コーティングした表面に高効率に結合したが、ビオチンアビジンを利用した系では、微小管同士のアグリゲーションなどが見られ本研究には利用できないことが分かった。 本年度は、9月頃に専門技術を有する研究補助員を雇用予定であったが、本人の出産により予定時期に雇用できず、また代替の者も見つからなかったため、本研究に遅れが生じた。そのため、研究期間の一年間の延長を申請し、承認された。
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Strategy for Future Research Activity |
構築したレクチン・シアラーゼ超複合体をシアル酸コートしたガラス表面に添加し、ガラス表面上での運動を観察する。シアル酸のガラス表面へのコーティングには、シアル酸 BSA(市販品)またはフェチュインなど天然のシアル酸結合タンパク質をガラス表面に物理吸着させた系を用いる。運動系の人工構築には、レクチンとシアル酸の結合・解離速度、シアラーゼの分解速度、または超複合体のガラス表面上での拡散速度など、至適な条件を探る。条件検討として、第一に、活性の異なる数種類のレクチンを試す。結合力は、レクチン自身の結合活性と複合体に含まれるレクチンの数または密度が重要な因子になると考えられる。そこで、超複合体を作製する際のレクチン濃度等を検討する。これらは、超複合体とガラス表面の結合の程度を観察して評価する。至適条件は、強く結合する条件とブラウン運動の影響を僅かに受ける程度の弱い結合の中間にあると予想される。さらに、超複合体のガラス表面上の拡散速度をコントロールする方法として、メチルセルロースなどの増粘剤の添加を検討する。実験と同時に、上記のパラメータがどの程度であれば良いのかコンピュータシミュレーションによる理論的な考察も行い、実験を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度9月に専門技術を有する研究補助員を雇用予定であったが、本人の出産により予定時期に雇用できず、また代替の者も見つからなかったため、組換えタンパク質の作製と調整および運動活性の測定の実験に遅れが生じた。そのための雇用費分として未使用額が生じ、研究計画に遅れた生じた。そこで研究期間の延長を申請し、了承された。 上記研究員が就業可能となり次第雇用し、平成26年度に組換えタンパク質の作製と調整および運動活性測定のための実験を実施するために、その人件費(一人x6ヶ月)および学会での成果発表旅費に充てることにしたい。
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